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京都ノートルダム女子大
人間文化学部教授 |
加藤明
Kato Akira
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最低基準を超えたかどうかにこだわる「絶対評価」 |
2001年、文部科学省が発表した「学習指導要領は最低基準」という見解は多くの教育関係者を驚かせた。それまでは、学習指導要領は「標準」というのが教育関係者の暗黙の了解で、必ずしもすべての生徒が到達しなければならない基準ではなかった。だが、学習指導要領が最低基準であるならば、教科書のすべての内容を習得することが必須の要件となる。相対評価から絶対評価への移行は、この見解を前提として実施された。評価は「最低基準」という前提の下に、集団の中の相対的な位置付けではなく、最低基準を超えているか超えていないかにこだわる評価でなければならなくなったのである。
しかし、新教育課程施行から2年近く経過した現在においても、絶対評価の意義を正確に汲み取り、評価に反映している中学校は少ない。こうした混乱の大きな原因は、絶対評価の意義や手法が現場に浸透していないことに起因すると思われる。そこで、望ましい評価の在り方とは何か、絶対評価に対する中学校の認識はどのようなものかを見てみたい。 |
「生徒の育ちの姿」が評価規準の策定に欠かせない |
前述のように絶対評価とは、ある一定のレベルを超えたかどうかを重視する「目標に準拠した評価」である。したがって、まず教科・単元の目標を明確に定める必要がある。その教科・単元を通して何を理解させるのか、どのようなものの見方や考え方を身に付けさせるのかといった「生徒の育ちの姿」を明確にすることが、評価規準を策定する上で欠かせないのである。そして、それを実現するための見通しとして単元計画を立て、「評価」という形でその成果を見取る。
ここで忘れてはならないのは、評価は指導の成果を確かめるために行うものと位置付け、さらにその成果を次の指導に生かしていくことだ。つまり、単元の要所要所で理解や定着を確かめ、それに応じて指導の軌道修正や指導指針として活用するのである(形成的評価)。
残念ながら、教育現場では通知票(総括的評価)だけを評価と思っている向きが多い。形成的評価を重ねることで、学習成果を確認した結果、評価規準を超えていない者には補充学習を、超えている者には発展学習を、選択学習や習熟度学習を利用して、生徒の実状に応じた指導方針を立てることができるのである。あくまで、目標と指導と評価は一体であるということを認識する必要があるだろう。 |
※評価基準と評価規準の表記について
本稿では文部科学省の表記に基づき、評価「キジュン」は「規準」で統一することとする。 |
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