ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
指導と評価の一体化を図る「絶対評価」の在り方とは
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「関心・意欲・態度」をどう図るかが今後の課題
 評価を行う際の指標となるのが、「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」の4観点だ。これは評価の観点であると同時に、目指すべき目標でもある。ところがこれまで、「関心・意欲・態度」「思考・判断」は目標として意識されてこなかった。日本の児童・生徒は学習意欲が低いということが指摘されて久しいが、それは従来、これらの指標が目標として意識されてこなかったからに他ならない。目標と指導と評価が一体である以上、常に目標を明確にして指導に当たらなければ、それが成果として表れないのは当然である。
 そこで今後は「関心・意欲・態度」「思考・判断」などの情意に関する観点を目標として意識し育てていくことが重要になる。もちろん、数学で方程式の解き方が分かる、そして実際に解ける、そうした「技能・表現」「知識・理解」が大切なのは言うまでもない。だが、学習が終わった後でも自分で調べるような興味や意欲を持ち、好きな単元があって、好きな作家がいる。このような豊かな人間性、素質を持った生徒を育成することは「技能・表現」「知識・理解」を身に付けさせることと同等以上に大切なはずだ。
 とは言え「関心・意欲・態度」「思考・判断」などの観点を評価の対象にするのは難しく、絶対評価の浸透を妨げる要因の一つになっている。「技能・表現」「知識・理解」は一定のレベルを超えているかいないかが評価の対象となるので、テストをすれば容易に測ることができる。しかし「関心・意欲・態度」「思考・判断」は以前に比べて伸びているかどうかが評価の対象となる。点数を付けられない取り組みに対して、どのように客観的な評価をするか。これは今後、議論を詰めていかなくてはならない課題の一つだ。
 また、今一つの課題は、評価規準が学校ごとに異なるため、中学校同士を単純比較できないことだ。中学校から内申を受け取る高校の側に、絶対評価に対する不信があるのは、まさにこのためである。自治体主導で共通の評価規準を作成する、あるいは地域の中学校が連携して評価についての目線合わせを行うなどして、これから益々議論を深めていく必要があるだろう。
 さらに、評価の時期に関する誤解もある。
 多くの教師が毎時間の授業において4観点すべてを評価しなくてはいけないと考えているようだが、本来は単元終了時点で、その単元で身に付けさせたい力として設定した目標(規準)について評価をすればよい。毎時間チェックしていたのでは、肝心の授業が疎かになり「評価のための授業」になることは明白である。単元の目標は何か、生徒の何を見て評価するのか、学校内でしっかりと議論をしてもらいたい。
 評価方法の工夫、規準の策定や統一など、絶対評価の運用には、まだまだ課題が山積されている。中でも中学校が最も苦慮し、かつ高校が懸念を抱いているのが評価規準の統一なのではないだろうか。地域内における評価規準の統一はもちろん、校内の統一にも方向性を見いだせない中学校が少なくない中、いかに絶対評価をより良いものにし、浸透させていけるか、各校の努力と裁量が問われている。
 次ページからは、中学校がどのように評価規準を策定し、校内で統一を図っているのかを、岐阜市立加納中学校の事例を通してみていきたい。
 
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