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一方、理科も
独自の指導スタイルを採用している。まず、カリキュラムの工夫だ。同校の理科は1年次に化学Iを必修(3単位)にしており、2年次に選択科目として物理Iや生物Iなどを置いている。特徴的なのは2年次に化学を1単位だけ実施している点だ。つまり、2年次に化学を全く勉強しない空白の期間ができないように、1単位設けることで、スムーズに3年次の化学IIへと接続できるわけだ。
さらに独特なのは授業内容だ。化学Iでは、教科書の内容を中学の教科書内容や移行・削除項目を考慮した上で精選。その代わりに実験を数多く採り入れた。化学IIでは、教科書ではなく問題演習中心の授業を展開している。そのねらいを矢野裕房先生は次のように明かす。
「化学の教科特性を考えての方針です。化学は数学と違って、いくら教科書を詳しく教えても実験をしないと生徒は具体的なイメージを描けません。また知識の定着を図るには、演習問題を繰り返し解くのが一番です。1年生のときに実験を数多く体験しておけば、2、3年で演習問題に当たるときも、問われている内容を深く理解した上で解くことができます。そのために教科書を使って教える量は、必要最低限に抑えているのです。化学Iの場合、だいたい週一回、後半になると2コマに一回は実験に充てていますね」
多くの生徒にとって実験は、知的好奇心を喚起される楽しい取り組みだ。1年次で化学を「面白い」と感じてくれれば、2年次以降の演習問題が多い授業にも、生徒は高い学習意欲を維持したまま臨むことができる。同じく化学を教えている矢野正裕先生は話す。
「2、3年生になって問題演習に取り組んでいるときに、実験に関する問題が出てきたとしますよね。すると『この実験を実際に試してみたいから、放課後理科室を使わせてください』と申し出てくる生徒がいるんですよ。1年生の時に、実験を通じて考えるという態度が身に付いているんですね。こうした科学的探究心を高校時代に養っておくことは、大学入試だけではなく、その先のことを考えたときにも大切なことだと思います。生徒の中には将来研究者や大学教員になる者もいるはずですから、授業では教科書よりちょっと上のレベルで知的刺激を与えてやるように工夫しています。そのせいか、本校には研究職志望の生徒が多いんです」
実験重視の指導スタイルが、生徒の科学的探究心の確立や、進路観の醸成にも役立っているというわけだ。そして2年次以降の授業では、国公立大個別試験レベルの問題への対応力を養成していく。
化学の実験風景。1年次から実験を行うことで、生徒の知的好奇心を喚起。2、3年次における学習の理解を促すだけでなく、教科に対する興味・関心も高まるという。
一方、物理では2年次の物理Iの段階から、演習中心の授業を展開しているという。物理担当の吉田明正先生は、次のように述べる。
「その日に教えた内容を、プリント問題にして授業中に生徒たちに取り組ませている他に、模試の過去問にも挑戦させています。公式を忘れている場合には調べてもいいが、友達には聞かないで自分で考えなさい、というのが指導方針です。答案は授業後に回収して採点し、次の時間に解説を付けて返しますが、理解するまで必ず先生に聞きなさいと話しています。やりっ放しではなく、完璧にその内容を習得させるように心掛けているんです」
この他、生徒の習熟度に合わせて初級、中級、上級のレベル別の課題を3題出して、次回の授業までに提出させているという。
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