ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 薬学教育改革の方向性とは
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Chapter5
卒業者の進路展望 ~多様化する薬学部出身者の進路

薬剤師は今後供給過多になる
 受験生の薬学部人気は、相変わらず根強い。背景には「薬学部で学んで薬剤師の資格を取得しておけば、卒業後の就職に困らないはず」という受験生心理が働いていることが想像される。
 だが図5の通り、薬剤師問題検討会(厚生労働省)は、今後は薬剤師の数が供給過多になると予測している。薬剤師資格を取得しても、必ずしも就職が保証される時代ではなくなりつつあるのだ。
図5
 また、もう一つ視野に入れておきたいのが、ここ数年の薬学部の新設ラッシュだ。04年度には8大学が薬学部を新設。05年度も新たに7大学の薬学部設置が予定されており、薬学部の総定員数は1万3000人に膨れ上がる見込みだ。一方、厚生労働省が示している薬剤師国家試験の合格者適正数は、年間6000~6500人程度。そのため試験の倍率が上がり、資格自体を取れない学生が増えることも予想される。

MRや食品会社など多様な分野への進出に期待
 今後、病院や薬局に勤務する薬剤師の数は過剰傾向が予測されるものの、薬学部出身者に対する社会的ニーズは決して低いわけではない。
 「製薬企業の売り上げは、MR(医療情報担当者)の数に比例すると言われています。そこでどの製薬企業でも、MRの拡充に乗り出しているんですね。現状では、MRは文系出身者が多いのですが、薬についての専門的な知識を持つ薬学部出身者が、今後この分野に進出していく可能性は高いのではないかと思います。
 また日本でも近年サプリメントを扱う食品会社が増えていますが、サプリメントの開発や販売についても薬学的な知識が不可欠です。食品会社からのニーズも高まっていくでしょうね」(桐野教授)
 つまり、病院や薬局勤務の薬剤師の需要は頭打ちになるが、一方でMRや食品会社など、新しい職域への進出が期待できるわけだ。
 「就職先によって、求められる知識や技能も変わってきます。今後は大学側も卒業後の進路の多様化に対応するために、学生の進路希望に応じた教育を行う必要が出てくると思います」(富田教授)
コラム


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