ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 日本・韓国・中国の高校生の英語力
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Part2 
高校生の自己概念の成熟度と英語学習の実態


韓国・中国は達成型の生徒が多い
 ここでは自己概念に関するアンケートとGTEC for STUDENTSの結果から、学習行動との間に相互作用が認められるアイデンティティの確立度と進路意識の発達段階の視点から、3か国の高校生の英語学習実態について見てみる。
 「アイデンティティ」とは、精神分析学のE・H・エリクソンが自我(その人らしさ)と社会性を統合した概念として提唱し、青年期を理解するために用いられてきた。
 人間は、個人としての側面と社会との関わりを統合しながら生きている。特に、将来の進路選択を迫られている青年期には、「なりたい自分」(自分の希望、欲望)と現実社会との間に介在する矛盾やギャップを調整しなくてはならなくなる。「その人らしさ」といった私的価値を追求する自我の確立と、他者や社会に働きかける社会性の確立を統合した概念がアイデンティティの確立であり、その人の「在り方」「生き方」そのものが反映され、生活や学習行動に関わる価値判断の基準となっている。
図5
 図6-1によると、日本は自我のスコアで平均値以上の%が、10ポイント以上他国に差を付けられている。図6-2を見ると、目標を持った学び(意図的学習)が成立しやすい「達成型」の生徒は、中国・韓国に多く、また、1・2年生での「達成型」の構成比を見ると韓国の伸びが大きく、日本・中国はほとんど変化しない。
図6-1、6-2
(注)図6-1は、30項目の設問を自我と社会性に関する質問項目に場合分けし、その肯定率の平均値を算出した。共に平均以上の者を達成型、平均未満の者を途上型、自我のみ平均以上の者を自我型、社会性のみ平均以上の者を社会型とした。図6-2は、日本の高2生(n=8,268)の平均値を基準として構成比を算出した。
 中国は、「達成型」と並び「社会型」の生徒も多く、この2つで全体の80%を超えていることが注目される。
 図7は、進路意識の発達段階を学年ごとに8段階に分け、分析したものである。
 青年期は、将来の「生き方」の選択を巡って、試行錯誤しながら人間として成長する時期であるが、このことを反映して「3混乱」「4模索」の段階にある生徒が日本・韓国では40%程度を占めている。また、自分らしさの追及を重視し、現実社会との調整を視野に入れにくい「5探索」「6希望」の段階も日本・韓国共に40%前後で、ほぼ同じ発達段階であると考えられる。
 これに対して中国は「3混乱」「4模索」の段階が20%前後と少なく、「5探索」「6希望」の段階に50%以上と集中している点で、日本・韓国とは異なった特徴を示している。
図7-1
図7-2
(注)棒グラフの数値は、8段階の構成比(%)


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