ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 日本・韓国・中国の高校生の英語力
PAGE 8/8 前ページ


「実用志向」の動機付けが指導の課題
 本稿の最後に、英語の各技能の習熟と関連する学習方法のデータ(図12・13)を見てみよう。
 A・不明語句の調べ方(語彙力)に対する反応は、日本が突出しており、韓国・中国両国の実践レベルはやや低い。また、B・文法の学習(文法力)は、3カ国とも30%強の実践率で、ほぼ同じ水準にある(図12)。
図12

 続いてC・長文読解の学習において、「パラグラフの意味を押さえる」「全文の要旨把握」など、言語形式よりも内容重視の学習スタイルを比較すると、その実践率は中国が一番高く、次いで韓国、日本の順であり、学力到達度による弁別性も極めて明確であることが分かる(図13)。

図13
(注)G1~G5・6はGTEC for STUDENTSのグレード
 さらに、英作文の学習において、「例文で特有の表現を覚える」「辞書を引きながら英訳する」など、やはり内容重視のスタイルでは、中国が突出して高く、日本の平均実践率は27%で中国の約半分にすぎない。韓国が低い水準にとどまっているのは、大学入試の影響が考えられると権五良教授は指摘している。

 今回の調査において、日本の英語教育の解決すべき課題を冒頭に述べたが、文部科学省の「英語が使える日本人育成のための行動計画」の研究グループを代表する吉田研作教授も、「4技能の統合的学習で他国が先行している」ことを指摘している。
 統合的英語力の育成には、学校内の学習活動のみでなく、学校で学んだ知識や技能を使ってみることによって、小さな成功体験や役立ち感を獲得する場面を設けることが求められている。
 実力以上に自己肯定のレベルが低い日本の高校生には、学ぶことの価値や有用性を訴求することが必要である。そのためには、学習結果が現実にどう役立つのかといった実用志向(※)の動機づけを、キャリア教育との関連で再評価すべきではないだろうか。(幸い実用志向に対する日本の高校生の反応レベルは高いということを付け加えておきたい)
※実用志向:生活や将来の仕事に必要な手段として学習しようとする外発的な動機を持つことで、学習内容に必然性を認める志向のこと(本誌04年度4月号「生徒の発達段階に応じた動機づけの手法を考える」参照)。


PAGE 8/8 前ページ
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse