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進学実績と生徒の自己実現とのジレンマの中で |
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山梨県では30年以上、総合選抜制度により公立高校入試が実施されている。同一学区内の高校の総定員数に当たる合格者をまず決定した後に、生徒の学力や通学距離などに基づいて各高校への合格者の配分を決定するのである。そのため各高校の生徒の学力は均等になり、上位層から下位層まで幅広い生徒が入学してくることになる。しかし、97年に同校が全県一区選抜の単位制に移行したことで状況は大きく変わった。総合選抜から離脱したことで、学区を越えて優秀な生徒が数多く入学してくるようになったのだ。教務主任の河澄芳男先生は、単位制に移行した後の数年間を次のように振り返る。
「確かに全県一区となり、成績面で優秀な生徒がより多く集まってきました。ただ一方で、『服飾デザイン』『外国事情』などといった、本校で展開される様々な単位制選択科目に魅力を感じ、大学以外の進路を選択肢として見据えながら入学してくる生徒も出てきました。また、男子バスケットボール部・吹奏学部が全国大会の常連であるように、広く部活動において顕著な実績を上げており、そういう面でも自己実現を図るために入学してくる生徒も少なくありませんでした。その中で00年3月、単位制移行後の一期生が卒業、国公立大現役合格者は104名でした。この実績に対して『入学時の学力に見合った実績を上げていないのではないか』との声が多分にありました」
こうしたジレンマを抱えながらも、同校は進学校としてのスタンスを明確にしなければならなかった。
「学校改革の進展の中で、高校もそこにいる教員も評価にさらされるのは確実です。今後、山梨県でも総合選抜制度がなくなれば、いよいよ本校も安閑としてはいられなくなる。選ばれる高校になるには、本校の良さを残しつつ、更に進学実績を高めなければならないと思いました」(河澄先生) |
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