教科・科目別試験における要求学力の変化 |
教科・科目別試験にも変化が |
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大学入試で最も出題の多い教科・科目別試験においても、ここ数年入試の要求学力は変化している。中でも主に先端研究や高度専門職を目指す人材を育成しようとする難関大でその傾向が強い。誌面の関係で数学・英語・理科に絞るが、実際の入試問題の分析結果と調査結果から、大学が求める要求学力がどのように入試問題に現れているかを述べる。 |
ではその内容を学部系統別に見てみよう。 |
(1)数学 ----------------------------------------------- |
理系学部の学部長アンケートでは、「受験生に対する課題解決力の測定を最も重視する」という結果であり、大学の学部教育との関連を重視する傾向があった。こうした力を見る問題はどのようなものなのだろうか。
実際の入試問題で大学が課題解決力を見ていると考えられる問題としては、「解法が多岐に渡り自分で方法を検討しなければならない問題」、「類型化が難しく糸口をつかむまでに発想力の要る問題」、「問題文中に定義などが述べられていて読解力が要る問題」などが当てはまるようだ。
「解法が多岐に渡る問題」の代表例は04年度の東京大前期理科系の1番、04年度東北大前期理科系の6番などがある。どちらも別解が相当数用意されていて、受験生はアプローチの仕方や道具を自分で見付けなければならない。
また「類型化が難しい問題」では04年度東京大前期理科系の2番、京都大前期理科系の6番など。
更に「読解力が必要な問題」は02年度の東京大前期理科系の6番や04年度同じく東京大後期理科系の2番などがある。
こうしてみると東京大は数学を言語のツールとして課題解決力を問うという方針が明確で、以前よくあった歯が立たない問題は減ったものの、解答を進める上では高度な論述力が問われている。
大学の学部での専門基礎教育との関連がある問題は学部系統ごとの出題が可能な場面で見られる。したがって数学という教科別の試験だけでなく、総合問題・小論文のタイトルで出題される場合もある。例としては03年度東京工業大前期2番や04年度同じく東京工業大後期4類小論文の1番などがあり、いずれも内容はほとんど数学である。
今後前期一本化を目指す可能性のある難関大(※5)の受験者は、ここで挙げたような出題が多く含まれる可能性を考えておいた方がよいだろう。 |
※5 今後前期一本化を目指す可能性のある難関大:03年11月、国立大学協会で、AO入試や推薦入試で一定の募集をする場合、国立大入試の前期日程一本化を承認した。また、更に04年11月の国大協総会で08年度からの完全一本化や秋季入学を認めるかどうかも含めて、抜本的入試改革を議論することになった。すでに東京大・京都大・東京工業大などは試験日程を一本化したい旨を表明している。 |
(2)英語 -------------------------------------------- |
図10は、大学入試センター試験で出題されている問題形式の分類を基に、個別学力試験では更にどのような問題が加わるかを模式的にまとめたものである。 |
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これを見ると分かるように、最近の難関大は英語の語彙レベルの高さを求めるのではなく、速読を求める超長文(1200ワード以上)の素材や自由英作文を課すことが多くなっていて、旧帝大ではデータや資料の読み取りといった広義の読解力を求める問題も見られるようになってきた。特に素材の長文化(データなども含む)は著しく、10年前と比較すると問題冊子のページ数が倍以上になっている大学もある。英語を情報処理ツールとして活用できるかを見たい、ということだろう。
また、旧帝大では以前から出題のある精読問題の素材も語彙レベルは下がっているが抽象度が高いため、日本語に訳した後で解釈する際に具体化が難しかったり、解答をまとめる際に一般化が難しいといった出題になっている。この点では国語の現代文の問題と要求学力項目が重複する。
英語の場合はもう1点、元々医科系単科であった大学・学部や、医学部の問題を独立させている大学の問題に注意が必要である。前章総合問題の箇所で述べたように、どうしても自然科学、とりわけ生命科学に関するテーマの素材が多くなりがちであるため、専門用語が多く、注がたくさんついてはいるが、見たことがないと読みにくい文章が多い。医学部の場合はどうしても資質や能力・適性も合わせて測りたいという意識が強くなるため、大学で学ぶ内容に近い文章にも触れておく必要があるようだ。 |