ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 大学入試改革の現状と展望
PAGE 10/11 前ページ次ページ


高校と大学のスムーズな接続のために
要求学力と受験生の学力にギャップ
 現段階では、過渡期である大学入試要求学力の変化をすんなり受け入れられるほどには、中等教育と高等教育の接続は必ずしもスムーズとは言えないだろう。接続段階の入試で出題されるテーマや要求学力の項目と実際に中等教育で指導されている内容との間に、まだ若干のずれがあるからである。
 これまで見てきたように、理科や社会科の試験はかなり先端研究に近いテーマが多くなり、国語・数学は思考のツール、英語は情報処理ツールとして活用できるかどうかを問う出題が多く見られるようになってきた。そのため、受験生に求められる学力と受験生が持っている学力のギャップが表面化しやすくなっている。既に現在の初等中等教育の指導要領には、身に付けた「基本的な知識を活用して課題を解決する力を付ける」べく、社会科や理科以外に考える材料や技法を習得するための生活科・家庭科・情報科・「総合的な学習の時間」などが導入された。いずれもここ2回の指導要領改訂で取り入れられた教科や時間である。
 確かに既存の教科とこうした新しい教科・時間が相互に連携し合うことができれば理想的な状態になるが、実際は全体の授業時間が減る中で、知識レベルは下がったとはいっても大学が求める科目やテーマの範囲は増加傾向にある。このため、高校現場での対応は量的に限界に近づきつつある。
ではその内容を学部系統別に見てみよう。
 
大学・高校の意見交換の場を
 これからの変革期に当たって、今現在高校側が感じて苦労しているギャップを埋めるために、大学と高校が本質的かつ具体的に意見を交換し合う場が求められるであろう。例えば、
1. 多くの教科に関連している「広義の読解力」をどこでどのように指導するか。
2. 大学の専門基礎教育やリベラルアーツ教育につなげるための高校での教育プログラムはどのようにすればよいか。
3. 社会科や理科の科目増を求められるのであれば、どこまでの領域を高校で絶対に指導しなければならないのか。
などを大学と高校間で共有しなければならないだろう。学習指導要領がミニマムスタンダードとなり、大学も高校も個性化が進む時期だけに、産学官が入試だけでなく、本格的に教育内容の「高大接続の在り方」を検討しなければならない時にきている。

PAGE 10/11 前ページ次ページ
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse