ベネッセ教育総合研究所
シラバスの活用 シラバス運用の新たな潮流
寺田隆士
長崎県立長崎東高校校長
寺田隆士
Terada Takashi
教職歴34年目。同校に赴任して2年目。「『よき世を創る』志を持った生徒を育てていきたいと思っています」
松尾博臣
長崎県立長崎東高校教頭
松尾博臣
Matsuo Hiroomi
教職歴25年目。同校に赴任して1年目。「自分のためだけでなく、世の中に尽くす生徒を育てたいですね」
西田哲也
長崎県立長崎東高校
西田哲也
Nishida Tetsuya
教職歴22年目。同校に赴任して15年目。1学年主任。理科担当。「何事にも一生懸命になれる生徒を育てたい」
●長崎県立長崎東高校
1948年(昭和23年)創立の伝統校。一般の生徒向けの総合コース、難関理系大を目指すシーボルトコースの2コースを置く。04年度入試では東京大1名、大阪大2名、九州大15名、長崎大71名、長崎県立大7名など国公立大に218名。慶應義塾大5名、早稲田大7名、立命館大12名、長崎純心大113名など私立大に延べ410名が合格。
URL:
http://www1.cncm.ne.jp/‾nhigashi/
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シラバスの活用
シラバス運用の新たな潮流
保護者用シラバスの運用が、多くの学校で進みつつある。
学校と保護者を結ぶツールとしての役割を超え、大きな学校改革の枠組みの中で捉える動きも出てきた。
今号では、6月号に引き続き保護者用シラバスを取り上げ、
先進的な取り組みを展開する長崎県立長崎東高校の事例を紹介する。


事例
学校改革と連動した保護者用シラバスの運用
長崎県立長崎東高校

関心が高まりつつある保護者用シラバス
 本誌でたびたび取り上げている保護者用シラバス。03年度は弊社進研ゼミ作成の「保護者向け進路シラバス」について1年間に渡って連載し、更に04年度6月号では実際に保護者用シラバスを運用している宮崎県立宮崎南高校の事例を紹介した。
 本誌にも、保護者用シラバスについては様々な反響を頂いたが、実際、高校現場では保護者用シラバスを作成する動きが徐々にではあるが広がりつつあるようだ。中には、単に保護者と学校を結ぶツールとしてのシラバスを超えて、学校改革という大きな流れの一部として位置付ける学校もある。内容面・形式面で様々な新しいアイディアが盛り込まれ、保護者の立場に立った視点から作られるようになっているのである。
 こうした動きを受けて、今号では長崎県立長崎東高校のシラバスの事例を通して、進化する保護者用シラバスの姿をレポートする。
 
学校改革と連動してシラバスの作成が進む
 長崎県立長崎東高校は、例年200名以上の国公立大進学者が輩出する県内屈指の進学校だ。長崎港を眼下に臨む風光明媚な高台に立地しており、恵まれた自然環境の下で、生徒たちは「よき世を創る」志と力を育んでいる。
 そんな長崎東高校は現在、ドラスティックな学校改革の真っ只中にある。03年度からは文部科学省の「学力向上フロンティアハイスクール」の指定を受け、04年度には中学校を併設して中高一貫校に生まれ変わった。松尾博臣教頭は、長崎東高校の保護者用シラバスはこうした一連の学校改革の流れの中に位置すると話す。
 「生徒気質の変化や学校週5日制への移行など、高校を取り巻く環境が急速に変化している現在、形骸化している行事や取り組みの見直しは必要です。本校が求める教育のための環境整備です。しかし、学校の内部だけを変えたのでは真の学校改革にはなりません。学校と保護者は車の両輪のようなものですから、保護者の方々にも変革期にある本校の姿を知っていただき、学校と保護者が一体となって生徒を育てる流れをつくり出す。そのためのコミュニケーションツールが、本校の保護者用シラバスなのです」
 長崎東高校が保護者用シラバスの作成を決めたきっかけとなったのは、本誌04年度6月号の宮崎県立宮崎南高校の事例だったという。折しも学校改革を進める中で、保護者に学校の実情を知ってもらい、生徒指導への協力を引き出すにはどうすればよいかを考えていた矢先のことだった。
 そこで、寺田士校長の指示の下、1学年主任の西田哲也先生が中心となって6月下旬より1年生の保護者用シラバスの作成が進められた。年度途中の作成ということで、9~3月の半年分だけではあるが、わずか1週間後にはシラバスの骨格が作られ、A4版20ページの冊子として製本が終わったのは9月上旬。寺田校長の発案からわずか3か月の突貫作業だ。こうした機動力の高さからも、長崎東高校の改革に対する熱意がうかがえるだろう。
 では、保護者用シラバスの目的や特徴と共に、長崎東高校がそれをどのように運用しているのかを、ポイントごとに見てみたい。


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