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工学の未来像進む異分野融合 |
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人材の広がりと共に、工学系の研究領域についても、高度な技術化の進展によりその可能性が広がりつつある。
東京大大学院新領域創成科学研究科の雨宮慶幸教授によると、「今後工学部が目指す新領域は『情報』『バイオ』『環境』『ナノテクノロジー』の4領域であり、これらが次世代の社会に責任を負う工学教育の行方を占うものになる」と説明する。
実際、この4領域は01年3月にまとめられた「科学技術基本計画」の4本柱にも位置付けられている。この4領域こそ、過去の工学領域に縛られない新領域の創成を意味するのである。このことを、ナノテクノロジーを例に説明してみたい。
「ナノ」とは10億分の1という超微細な単位で、ナノテクノロジーとは原子レベルで加工・操作してモノを作る技術である。従来、こうした「ナノ」の世界は化学・物理学などの領域に限られていた。しかし、現在では電子素子、記憶材料、金属、プラスティックなど、極めて広範な工学領域にまで広がっており、次世代を担う高機能素材や電子・医療機器の開発に不可欠な最先端のモノ作り技術となっている。物質をナノレベルで見ることで新しい性質を把握する事が可能になり、それを活用することで優れた新機能を持つ製品を生みだしていくことができるのである。日本経団連の試算によると、「ナノテク市場」は、05年には2兆4千億円、その5年後には27兆円規模にまで膨れあがると予想され、産業革命に匹敵する変革をもたらす可能性を秘めていると言われる。
工学はかつて「物理」「化学」の応用が中心だった。この応用過程で、カーボンセラミック、プラスティックなど様々な工業品が生み出されてきた。しかし、今では生物学のみならず、脳科学などの基礎医学、更には心理学の応用までを期待され、21世紀社会の様々な懸案を解決する技術応用が期待されているのである。 |
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