専門分野ごとのFD活動が必要 |
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教育内容・方法の見直しが進む中で、今後一層重要になるのがFD活動だ。新任教員の研修会や教員相互の授業参観、合宿型のワークショップなど全学体制で実施している大学が多く、02年度現在、FD活動の導入大学は全体の約67%を占める。その数は、年々増加傾向にあるが(図4)、川嶋教授は大学全体で行うFD活動の実効性に疑問を呈する。 |
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「大学全体で一斉形式で行うFD活動は、教員の意識啓発の面では有効だと思いますが限界もあります。教室内での具体的なアクティビティを変えるには、学部や専門分野、学会単位で分野ごとに、教育内容・到達目標に応じたFD活動を行う必要があるのではないでしょうか」
FD活動が増えている背景には、99年にFD活動が努力義務として規定され、政策誘導として導入大学に資金が提供されてきたという事情もある。また、法学部や工学部など分野によって個別にFD活動が展開されている例もあるが、それは教育者としての意識が内発的に高まった結果というよりも、あくまで法科大学院やJABEE(※4)などの設置に伴う外部要因への対応という側面が強いことも否めない。 |
※4 JABEEとは、日本技術者教育認定機構が実施する技術者教育プログラムの認定制度の略称。 |
「教育者としてのスキルを高めていくという観点から、もう一度『FDとは何か』を考えてみる必要がある」と、川嶋教授は述べる。
もっとも、ティーチングティップスを活用して指導力向上を図る名古屋大の取り組み(本誌04年10月号参照)や、学生アンケートなどの結果を基に「最優秀講義賞」を受賞した教員が、翌年の新任教員のアドバイザーを務める東京農工大工学部の取り組みなど、実効性の高いFD活動を推進する大学も少なくない。また、医学分野では学会主導でFD活動を行うなど、専門分野単位の取り組みも見られる。FDを通じ、実効性ある教育改善をどれだけ推進できるか、大学の改革に対する姿勢が問われている。
06年度以降、新しい学力観を持った新課程生が大学の門をくぐるが、前述したように「教員中心から学生中心へ」というパラダイムシフトによって、大学教育の在り方は大きく変わっていくだろう。
教養部解体や専門学部制などのシステムの十分な総括がなされていないことは大きな課題だが、先にも述べたように、大学の学びは確実に「ティーチングからラーニングへ」とシフトしていく。主体的に学びに向かう態度を身に付けなければ、学生が真に大学改革の成果を享受することはできない。学生が自ら学習意欲を高め「大学を活用する」時代が来ているのである。 |