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新課程設置によって生じた教員養成課程の「ひずみ」 |
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だが、一連の定員削減政策は、教員養成系大学・学部の内部に様々なひずみをもたらすことになった。最大の問題が新課程(ゼロ免課程)の在り方だ。87年以降、教員就職率の低下に伴い、各大学は教員以外の職業分野の人材や高い教養と柔軟な思考力を身に付けた人材養成を目的として、教員養成課程の一部を新課程へと改組していった。新課程を置くか否かは最終的には各大学の裁量に任されていたのだが、結果としてはほとんどの国立の教員養成系大学・学部が新課程を設置した。国立大の教員養成課程における「目的養成」機能の重要性を訴え続けてきた宮城教育大の横須賀薫学長は、新課程設置の背景を次のように分析する。
「大きく二つの理由があります。一つは教員就職率の問題。教育学部の中に新課程があっても、教員採用率の算出に新課程の定員は含まれない。つまり、新課程に定員を振り向けることで採用率の分母が縮小し、数字上の教員採用率を上げることができるわけです。もう一つは、教員の専門志向です。従来から、基本的に教員養成課程の教員の本音としては教員養成よりも自分の研究に打ち込みたいという志向が強い。新課程を作ることで、自分たちの専門領域を回復できると考えたんです」
また、東京学芸大の岩田康之助教授は、新課程における「アイデンティティの希薄化」を指摘する。
「新課程は確固とした目的を持って教員を集めたり、カリキュラムを組んだりしているケースばかりではありません。既存の教育学部のリソースを使って作らざるを得ないため、位置付けが曖昧になっている。しかも、それが教育系学部の内部にあるために、受験生の学部・学科選択を分かりにくくしている面もあるのだと思います」 |
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