ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 東アジア高校英語教育GTEC調査報告 小学校英語導入、SELHi型指導の成果を探る
吉田研作
上智大外国語学部長
吉田研作
Yoshida Kensaku
ミシガン大博士課程を経て現職。同大国際言語情報研究所長、文部科学省「『英語が使える日本人』の育成に関する行動計画」第1研究グループ・リーダー、小学校英語指導者資格認定協議会理事等として活躍中。
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インタビュー
調査結果から考える日本の英語教育の行方
 今回の調査で明らかになったように、今後の英語教育の課題はコミュニカティブな力を含め、いかにバランス良く各技能を伸長させるかにある。そうした課題認識に立ったとき、日本の英語教育にはどのような変革が求められるのだろうか。教育行政や英語教育事情に詳しい上智大の吉田研作教授にうかがった。


普及が望まれるSELHi型の指導
03年度に引き続き2回目となった東アジア高校英語教育調査ですが、日、韓、中の3国の英語教育の特質が、一層明確に見えてきたように思います。データをご覧になって、先生はどのような印象をお持ちでしょうか。
そうですね。今回の調査結果を見て、高校の先生方が最も大きなインパクトを受けるのは、海外との違いよりも、一般の高校とSELHiの違いではなかったかと思います。特に、「SELHiはコミュニケーション能力の育成に偏重した指導を行っているのではないか?」と捉えていた先生方にとっては、4技能がバランス良く伸びている事実は大きな刺激になるでしょう。   05年度からは、文部科学省もSELHiの指導実績・成果の共有・普及に本格的に取り組み始めます。グループワークによるコミュニカティブな指導、あるいは、英語力を多面的に計測できる評価手法の導入などが、広く普及するのが望まれます。
SELHiで実践されているような指導の良い部分を、どれだけ取り入れられるかが指導改善のポイントと言うわけですね。では、そのためにはどのような課題をクリアしなければならないとお考えですか。
まず第一に、教育行政のレベルで、指導ノウハウを学校間で共有するための仕組みづくりが求められます。現在、広域的な指導ノウハウの共有は、都道府県が実施する教員研修の場で行われていますが、その機能は十分とは言えません。国の行財政改革に伴って、地方への財源委譲が進められていますから、これを機に、改めて地方自治体がその在り方を見直す必要があるでしょう。現在は補助のないNPO主催の研修会や自主研修への参加についても、財政的な支援が望まれますね。
教師一人ひとりのレベルではどのようなことが望まれるでしょうか。
何より高校段階で育成すべき英語力に対する認識を見直すことが必要でしょう。近年は、大学入試も様変わりし、コミュニカティブな力を含めた、総合的な英語力を問う出題が増えています。センター試験へのリスニング導入などはその象徴であるわけです。今までは「入試の縛り」が、暗に授業内容を読解中心のものに規制してきたわけですが、その前提は大きく変わりつつあります。むしろ、実際に使える英語力を育成することが、入試学力の育成に結び付く状況になってくるわけです。その重要性を改めて考え、授業改善につなげていっていただきたいですね。


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