Q |
各高校における指導改善と共に、政府レベルの動きも見逃せません。現在、文部科学省では、小学校段階から英語教育を実施することが議論されています。今回の調査においても、小学校に英語を導入した韓国のスコアがかなり伸びており、議論の動向にも影響を与えそうです。この点についてはどう考えておられますか? |
A |
韓国のスコアの伸びについては、純粋に学校教育の成果だと言えない面もありますが、私自身は英語教育を小学校で実施することについて賛成です。発達心理学の知見に照らしても、言語教育は若年時から実施したほうが効果的なことが知られています。今回のデータは文部科学省も注目していますから、小学校段階での英語導入に向けた議論に大きな追い風となるでしょう。 |
Q |
すると、今後日本で小学校段階から英語教育を実施する場合、韓国よりも更に早い学年段階から英語教育を実施する形になってくるのでしょうか。 |
A |
必ずしもそうとは限らないと思います。母国語を習得するのとは異なり、学校の授業として英語を教える場合には、生徒にある程度の思考力や理解力があることが前提となります。こうした点を日本の実情に合わせて考えると、おそらく小学校4年生程度の段階でなければ、内容のある授業は行えないのではないかと思います。 |
Q |
なるほど。小学校で英語を導入すると言っても単純な議論ではないわけですね。 |
A |
まさにその通りで、議論を進める上では、何より小学校段階で身に付ける英語力を定義しなくてはなりません。また、指導手法、中学・高校教育との連続性、更には、小学校英語を教えることのできる教師の育成なども重要な課題です。現在でさえ、中高接続段階での学力ギャップが問題となっているのですから、単に韓国の真似をするだけでは、かえって現場を混乱させるだけにもなりかねません。韓国では、小学校段階への英語導入と合わせ、小中高の垣根を越えた教員研修が盛んに実施されるようになりました。国策的に「どういう英語力を国民に身に付けさせるのか」を考えた上で、政策を組み立てることが大切です。私個人としては、6・3・3制という枠組みそのものの妥当性を問い直すところまで、議論が深まることを期待しています。 |