文武両道を内実のある教育目標として位置付けるには、何よりもまず、その教育的な意味を学校全体で再確認することが必要だろう。生徒の精神的な成長や、集団適性の涵養といった面はもちろんだが、何より部活動や特別活動が、必ずしも学習にネガティブな効果を与えるものではないことを確認しなければなるまい。しばしば文武両道の障害として指摘される、校内の「部活派教師」「学習派教師」の溝を埋める上でも有効なはずだ。
その際には、単に実感レベルで話をするのではなく、客観的なデータを示して校内コンセンサスを形成したい。「文武両道」に基づく指導を徹底している学校では、部活動加入者と非加入者の模試成績を比較したり、各部のキャプテンの成績を示したりしながら、校内コンセンサスを形成する取り組みも行われているようである。また、下に示したのは、弊社「スタディーサポート」の分析結果であるが、部活動と学力の間には、少なくとも単純な反比例関係は見いだせない。むしろ、両立できている生徒は「成績が上昇」する割合が高いことや、部活動をしていないにもかかわらず、成績が低下している生徒が多いことが示されているのではないだろうか。場合によっては、こうしたデータや、他校の事例を参考に校内で議論することも必要であろう。生徒に文武両道を求める以上は、教師自身が文武両道の理解者・伝導者であるべきだ。
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