特集 真の「文武両道」を目指して
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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部活動を通して「自己管理能力」を育成する

 祇園北高校の取り組みでまず着目されるのは、3年間の指導ストーリーが、「1、2年の間は部活に集中させ、3年で一気に学習に切り替える」というビジョンに沿って構築されていることだ。進学校でこうした指導を行おうとした場合、一般的には、1、2年次の家庭学習時間の維持が大きな課題となるが、祇園北高校ではあえて、1、2年次の家庭学習目標を抑え気味に設定しているのだという。
  「本校の各学年の家庭学習の目標時間は、1年次が週15時間、2年次が週16時間、3年次が週35時間です。1、2年次の学習時間が低めに見積もられていることに驚く方もいるかも知れませんが、1、2年次に学習面で負荷をかけすぎては『勉強と両立ができないから部活を辞める』と考える生徒が出てこないとも限りません。実際、2年次の家庭学習目標を週20時間に設定していた04年度までは、生徒も教師も、ややもすると疲弊していた面があったんです。思い切って、生徒の実態に即した目標設定をすることで、早期のドロップアウトを防いだわけです」(松崎先生)
  とは言え、単純に学習時間を減らしただけでは、肝心の「文」の面が疎かになってしまう。そこで祇園北高校では、「『授業力』スパイラルアップシート」「学力向上ノート」、シラバス等(図1参照)を作成して、授業の質的向上を図ると共に、「部活の中で学力を養う」という発想に基づいて、部活動の運営方法を工夫している。学習時間を低めに見積もった分は、授業の質の向上と、部活動で磨いた集中力や生活管理の力でカバーしようというわけだ。
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図1
 卓球部顧問で生徒指導部長の作本耕二先生は、そうした祇園北高校の部活動の在り様を「武からの学力向上」というキーワードで説明する。
  「人格形成や精神力の育成など、部活には様々な効果があります。しかし、『文武一貫』というビジョンに照らしたときに、最も必要となるのは、部活を通して得られる自己管理能力ではないでしょうか。『全国大会出場』といった目標を設定し、それを実現するための練習メニューを考え、期間を区切ってきちんと自己管理をするというアプローチは、いわゆる『自律的な学習』を進めるアプローチと全く同じですよね。部活と学習のこうしたつながりを、各部の顧問が意識して指導に当たることが、『武からの学力向上』を果たすための第一歩なんです」

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