以上のようなプロセスを通じて、祇園北高校の生徒たちは、3年夏の引退までに「部活を通して」自己管理の手法や自律的な学習姿勢を身に付けていく。「3年次に部活を引退した途端、驚異的な成績の伸びを見せる生徒が多い」(松崎先生)と言うが、それも2年次までの徹底した部活動での指導があればこそだ。
「生徒の学習時間を調査したデータを見ると面白いことが見えてきます。部活を引退した後、それまで部活に充てていた時間を、そのまま学習時間に転換できる生徒が多いんですね。例えば、朝練をやっていた生徒は、部活を引退しても早朝に登校して、朝練に使っていた時間をそのまま自主学習の時間に充てるようになるんです。部活と授業の切り替えを通して確立したメリハリのある生活習慣、そして、自己管理能力があるからこそ、このような切り替えがうまくできているのだと思います」(澤田先生)
才木裕久教頭は、そうした伝統を「学校文化」として継承していくことが、祇園北高校の今後の発展に大きな意味を持つと感じている。
「本校が築いてきた伝統は、一朝一夕にでき上がったものではありません。先生方の熱意が長年の間に生徒たちに根付き、それが世代を越えて受け継がれていった『学校文化』だと思うのです。だからこそ、卒業生が『勉強も部活もどっちもできて本当によかった』と言って卒業してくれることは、私たちにとって何よりの喜びですね。そして、そうした声の一つひとつが、保護者や地域へのアピールになっていると考えています。進学指導一辺倒でもない、スポーツエリート校でもない、公立高校のあるべき指導の一つのモデルとして、今後も『文武一貫』という学校文化を継承していきたいと思います」
教育環境の変化の中で、文武一貫という学校文化を守ろうとする祇園北高校の姿勢には、他校にとっても学ぶべき点が多いのではないだろうか。
|