もっとも、学部との接続という点に関しては、両者のスタンスには若干の違いがあるようだ。
一橋大商学研究科では、研究科内に研究者養成コースと経営学修士コース(MBA)の2コースを設置。両コースとも学部との接続を前提とした「学部・修士5年一貫教育プログラム」を策定している。学部・修士5年一貫教育プログラムの履修資格者に認定された学生は、学部4年次にそれぞれのコースの講義を受講し、通常2年間の修士課程を学部と合わせて5年間で修了する。一橋大・山内教授は「企業の新卒採用に対応して、即戦力として有為な人材を育成するには5年一貫教育が重要」と強調する。
一方、神戸大経営学研究科では、研究者を養成する従来の修士課程では5年一貫教育を行うプログラムを設けているものの、MBAプログラムはあくまで実務経験のある社会人が対象だ。学部卒業後、最低1年間は企業活動を体験していることが、入学要件の一つになっているのである。
「一定の実務経験を持った学生が、経験に基づいて議論を行い、教員のサポートによって自ら解決策を導き出すことが大切です。本学では企業で10年くらい働いた人が経営の知識をリフレッシュするという意味合いが強いんです」(神戸大・櫻井教授)
アメリカでは管理職になるための必須の資格とされるMBAだが、日本での認知度は今ひとつだ。そのため、今後、MBA取得者の社会的ステイタスがどの程度のものになるのかは気になるところである。一橋大・山内教授は、「我々がMBAコースを通して有能な人材を輩出することが、MBAが社会に認められるプロセスになる」と気概を語る。一橋大学では今後、研究者養成コースの博士課程との調整を行い、MBAコースの大幅な拡大・強化を図ってゆくという。MBAの門戸が広がるに連れ、企業でのMBA認知が高まっていくのかも知れない。
|