大学改革の行方 経済・経営系学部の改革の現状
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 5/7 前ページ  次ページ

Chapter2 MBAの行方と求められる人材像

 MBAの認知度向上は各大学の実績次第

 近年、いくつかの学問分野で専門職大学院の設置が活発化しているが、経済・経営系においても例外ではない。現在、全国の国公私立大のうち、ビジネス・会計系の専門職大学院を設置している大学は24大学30専攻(図3)。中でも、近年注目を浴びつつある資格がMBA()である。一橋大商学研究科のように既存の修士課程の中にMBAのコースを設置している場合と、神戸大経営学研究科のように専門職大学院としてMBAコースを設置する場合とがあるが、いずれも専門的な経営のプロフェッショナルを育成するという点では同様だ。

)Master of Business Administration(経営学修士号)の略で、大学院レベルで経営学を学ぶプログラムのこと。

▼図3 クリックすると拡大します。
図3

)Management of Technologyの略で、一般的に技術経営と訳される。技術開発において必要な専門的経営能力向上を目指す教育プログラムを指す。

  もっとも、学部との接続という点に関しては、両者のスタンスには若干の違いがあるようだ。
  一橋大商学研究科では、研究科内に研究者養成コースと経営学修士コース(MBA)の2コースを設置。両コースとも学部との接続を前提とした「学部・修士5年一貫教育プログラム」を策定している。学部・修士5年一貫教育プログラムの履修資格者に認定された学生は、学部4年次にそれぞれのコースの講義を受講し、通常2年間の修士課程を学部と合わせて5年間で修了する。一橋大・山内教授は「企業の新卒採用に対応して、即戦力として有為な人材を育成するには5年一貫教育が重要」と強調する。
  一方、神戸大経営学研究科では、研究者を養成する従来の修士課程では5年一貫教育を行うプログラムを設けているものの、MBAプログラムはあくまで実務経験のある社会人が対象だ。学部卒業後、最低1年間は企業活動を体験していることが、入学要件の一つになっているのである。
  「一定の実務経験を持った学生が、経験に基づいて議論を行い、教員のサポートによって自ら解決策を導き出すことが大切です。本学では企業で10年くらい働いた人が経営の知識をリフレッシュするという意味合いが強いんです」(神戸大・櫻井教授)
  アメリカでは管理職になるための必須の資格とされるMBAだが、日本での認知度は今ひとつだ。そのため、今後、MBA取得者の社会的ステイタスがどの程度のものになるのかは気になるところである。一橋大・山内教授は、「我々がMBAコースを通して有能な人材を輩出することが、MBAが社会に認められるプロセスになる」と気概を語る。一橋大学では今後、研究者養成コースの博士課程との調整を行い、MBAコースの大幅な拡大・強化を図ってゆくという。MBAの門戸が広がるに連れ、企業でのMBA認知が高まっていくのかも知れない。


  PAGE 5/7 前ページ 次ページ