だが、このアンケートの成果はそれだけにとどまらなかった。具体的な授業改善の努力の中で、教師の意識そのものが徐々に変わってきたのである。これまでは木村校長からのトップダウンで進むことの多かった改革が、これを機に次第に教師自らの手で自発的に進められるようになっていったのだ。保守的な空気が支配的だった高津高校で、なぜこのような変化が起きたのか。その理由を寺尾先生は次のように考えている。
「どんな教師でも『生徒のためになることをしたい』という一点においては意識は同じです。アンケートで生徒の声を聞くという手法が、そうした潜在意識に訴えたんでしょうね。まず、国語科の先生が、自ら『私の授業を見に来てください』と公開授業を率先して実行されました。これを突破口に、『じゃあ自分の授業も見せなくちゃいけないな』『他にも生徒にしてやれることがあるんじゃないか』という具合に、一気に歯車が回り始めたんですね」
2学期制・半期認定制の導入、模試と面談のリンクによる効果的な進路指導、シラバスの作成、土曜日の補習など、これまでは遅々として進まなかった取り組みが、わずか1、2年の間に矢継ぎ早に実行に移されていった(図3)。その様子に木村校長は、着任2年目頃から、教師の底力を感じるようになったという。
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