教師の変化は生徒の学習意欲にもプラスの波及効果をもたらした。従来は予備校に通う生徒が多かった土曜日も、今では学校の補習に参加する生徒が9割を超えた。また、模試の成績なども次第に伸び始め、教師たちも改革の成果に自信を深めていった。
このような追い風を受けて、高津高校の教師たちが次に取り組んだのは、保護者の意識啓発であった。
「教師、生徒がやる気になったとき、次に問題となるのは保護者の意識です。多くの先生方が感じていらっしゃると思いますが、頑張って難関大にチャレンジしようとしている生徒に、『そんなにやらなくてもいいから』と言ってしまう保護者は意外に多いのです。改革に向けた本校の決意、大学進学に向けた生徒の意欲を伝えることで、生徒の頑張りを保護者も支える回路をつくることが必要だと考えました」(寺尾先生)
そこで高津高校では、親睦団体としての性格が強かったPTAの役割を、「進路実現の後援組織」として再定義し、保護者会、PTA総会などを通じて、積極的な情報発信、協力要請を行った。また、「生徒の進路実現のためには保護者自身が大学を知る必要がある」という考え方の下、PTA主催の大学見学会を実施した。国公立大の施設・設備の充実度について、保護者自らの目で確認できる機会を設けたわけだ。
「生徒が大学進学を志しているなら、保護者も大学について知る必要があります。04年度には100名ほどの保護者と共に、本校が重点的に生徒を送り出そうとしている大阪大を訪問しました。実際に大学のキャンパスに足を運んでみて、刺激を受けた保護者の方も多かったようです。生徒の頑張りを家庭で支えることの意味を再確認した方も多かったようですね。05年度には、文系の志望者が多い神戸大を訪問する予定です」(寺尾先生)
こうした努力が実を結び、後援組織としてのPTAの機能・モチベーションは一気に高まった。高津高校が校外模試の実施や教室へのエアコン設置を迅速に実現できたのは、その協力の賜物である。
|