VIEW'S REPORT 小中高生の学習実態から見る高校教育の実態
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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 高校導入期の動機づけが不可欠

  次に、学習に関する意識や行動を見ていきたい。図5は、学習の取り組み方について尋ねた結果を、小・中・高の学校段階別に示したものである。調査票では「とてもそう」から「ぜんぜんそうでない」までの4件法で回答を得ているが、ここでは「とてもそう」+「まあそう」と回答した割合で、高校生の数値が大きかった順に項目を並べてある。

▼図5
図5

  まず、目を引くのは、「今までにもっときちんと勉強しておけばよかったと思う」といった学習への後悔や、「上手な勉強の仕方が分からない」という学習法への戸惑いを持つ生徒が、小学生では半数以下であるが、中・高生になると急増し、7割にも及ぶ点である。
  更に、「勉強しようという気持ちがわかない」「どうしてこんなことを勉強しなければいけないのかと思う」など、学習意欲の減退や学習目的が見えないという悩みも、半数以上の中・高生に見られる。
  また、「テストで間違えた問題をやり直す」といった反復学習や、「他にやりたいことがあっても我慢して勉強する」などの姿勢が、中・高生になると落ち込んでいることも特徴と言える。
  学年別に詳しく見た図6でも、学習に対する後悔や学習法への戸惑いが、特に小6生から中1生の間で大きく増加していることが分かる。また、学習意欲が減退し、学習目的への悩みが大きくなるのもこの時期である。中学校では、小学校と比べて学習進度が早まり、学習内容の難易度も高まるために、学習につまずきやすい状況が生まれるのであろう。

▼図6 クリックすると拡大します。
図6

  次に、高校生に絞って詳しく見てみよう。図7は高校の偏差値層別に学習の取り組みの様子を示している。ここからは3つのポイントを指摘できる。

▼図7
図7

  第一に、多くの項目で高校偏差値層による差が見られる。例えば、「分からないことがあると『もっと知りたい』と思う」といった知的好奇心や、「親に言われなくても自分から勉強する」といった自律的学習の姿勢は、「偏差値60以上」の高校の生徒の方が、その他の偏差値層の高校の生徒よりも身に付けている。
  反対に「勉強しようという気持ちがわかない」「どうしてこんなことを勉強しなければいけないのかと思う」などの学習意欲の減退は、「偏差値50未満」の高校の生徒に多く見られる。
  第二に、「今までにもっときちんと勉強しておけばよかったと思う」という後悔は、偏差値層による差がそれほど大きくはない。いずれの偏差値層においても8割前後を占めていることは注目されよう。また、「上手な勉強の仕方が分からない」についてはどの偏差地層でも7割を超える。また、「テストで間違えた問題をやり直す」という反復学習の姿勢を持っているのは、偏差値60以上の高校でさえも3人に1人にとどまっている。このように、学習への後悔や戸惑いは、どの高校の生徒も広く持っている共通の意識である。
  第三に、生徒の進路状況に応じた学習の目標設定が、学習の動機になっている。例えば、「受験を目標にして勉強する」のは、「偏差値60以上」53.8%、「偏差値50~60未満」44.4%、「偏差値50未満」32.2%と「偏差値60以上」に多い。
  一方、「資格試験や検定試験(英検、漢検など)を受けるための勉強をする」のは、「偏差値60以上」20.0%、「偏差値50~60未満」32.4%、「偏差値50未満」34.8%で「偏差値50未満」の方が多い。
  更に、校内の成績層別に学習の取り組みの様子の違いを示したものが図8である。これによると、高校の偏差値層によらず、校内で成績上位層の方が下位層よりも、知的好奇心を持ち、自律的な学習やテスト後の反復学習の姿勢などを身に付けている傾向が見られる。

▼図8 クリックすると拡大します。
図8

  中でも特徴的だったのは、「定期テストはしっかり準備をして臨む」についてである。成績上位層と下位層の差で見ると、「偏差値60以上」で40.5ポイントの差(上位層:70.3% 下位層29.8%)、「偏差値50~60未満」で35.9ポイントの差(上位層:64.1% 下位層28.2%)、「偏差値50未満」で31.2ポイントの差(上位層:61.3% 下位層30・1%)となっており、いずれの偏差値層の高校においても、校内の成績上位層の6~7割は定期テストに向けた準備をしっかりして臨んでいる。つまり、いずれの学校においても、定期テストは学習に向かう上での動機の1つになっており、学習意欲の向上を図る上で、ポイントになっていることが確認できる。


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