VIEW'S REPORT 小中高生の学習実態から見る高校教育の実態

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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 ポジティブな学習の理由の重要性

 子どもたちはどうして学習をするのだろうか。あるいはどうしてしないのだろうか。そこで、学習をする理由や目的について尋ねた結果を見てみよう(図9)。数値は「とてもそう」+「まあそう」と回答した割合である。

▼図9
図9

  高校生が学習する理由を見ると、「自分が就きたい仕事に就くのに必要だから」「高校生のうちは勉強しないといけないと思うから」「問題が解けると嬉しいから」がベスト3である。
  中でも、学習を自分が希望する仕事のために必要だと捉えている高校生は79.1%に上る。小学生が60.1%、中学生が65.8%であったことと比べると増加している。その一方で、「成績が良いと親が褒めてくれるから」という理由は、小学生55.0%、中学生42.0%、高校生29.3%と、学校段階が上がるに連れて一貫して減少している。高校生は学習を自己実現のために必要なことと捉えているようである。
  図10は、高校生のデータを更に詳しく示したものである。これによると、高校の偏差値層を問わず、成績上位層の方が成績下位層よりも、学習に対してポジティブな理由を見いだしていることが分かる。

▼図10 クリックすると拡大します。
図10

  例えば、「問題が解けると嬉しいから」「いい大学に入りたいから」「いろいろな考え方を身に付けることができるから」といった理由では、高校の偏差値層を問わず、成績上位層の方が下位層よりも、10ポイント以上高い。また、「自分が就きたい仕事に就くのに必要だから」という理由も、「偏差値60以上」の高校では9.1ポイントの差であるが、「偏差値50~60未満」や「偏差値50未満」の高校では10ポイント以上の差が見られる。「友達に負けたくないから」という理由については、特に「偏差値50未満」の成績上位層と下位層の間で差が大きく、31.1ポイントもの差がみられる(成績上位層62.1% 成績下位層31.0%)。総じて、成績上位の生徒ほど、自らの内発的な動機に基づいて学習に取り組んでいることがうかがわれる。
  これとは逆に、「高校生のうちは勉強しないといけないと思うから」や「勉強しないと頭が悪くなるから」といったネガティブな義務感を学習の理由に挙げる割合は、高校の偏差値層による差があまり見られない。
  こうした結果は、学習に取り組む際、ポジティブな理由を見いだすことができるかどうかが、非常に重要であることを示唆しているものと考えられる。多くの学校では進路学習等を通じて、生徒を主体的に学習に向かわせる動機づけが行われているが、そうした方向性は、データからも妥当性が高いと言えそうだ。


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