大学改革の行方 「理科離れ」に挑む理学部の改革
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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領域横断型の研究体制を 構築しつつある大学院

 学部段階の改革に加え、大学院の研究体制もドラスティックに変わりつつある。物理や化学などの枠に捕らわれない、領域横断型の編成を志向する大学院が増えてきているのが特徴だ。
  新潟大大学院では96年、それまでの理学・工学・農学の各研究科を統合し、修士課程9専攻と博士課程5専攻からなる自然科学研究科に改組。更に04年には、前期課程を9専攻から6専攻に改組し、専攻区分を大きくすることで関連専門領域の連携を強化した。理・工・農の教員が一体となって関連分野の教育研究を推進することで、理・工・農の領域の融合による学際・複合領域を強化し、理・工・農それぞれの関連専門領域についても効率的に教育・研究できるようにするためである(図3_A)。
  一方の北海道大では、06年4月から現在の理学研究科を改組し、大学院理学院を開設すると共に、旧理学研究科の化学専攻・生物科学専攻と薬学研究科・農学研究科を統合して、新たに生命科学院を設置する(図3_B)。同時に、これまでは教員が所属する「研究科」と学生が所属する「大学院」は直結しており、ある研究科の教員が他の研究科に属する大学院で教えることにはかなり制約があったが、06年からは教員組織と大学院の関係をフレキシブルにし、各研究院の相互乗り入れを可能にした。

▼図3-A、図3-B

図3

  こうした大学院改革の流れを見て分かることは、これからの理学は基礎理論を追究するだけではなく、工学や農学、薬学などと協働しなければ、目覚ましい研究成果を上げることはできなくなっているということだ。北海道大・岡田教授は次のように述べる。
  「本学では『トポロジー理工学の創生』というテーマでCOEに採択されましたが、これは工学研究科に理学研究科が協力する形で進められました。また、理学研究科で採択された『新自然史科学創成│自然界における多様性の起源と進化』も、地球惑星科学専攻と生物科学専攻の教員による共同研究です。研究科と大学院の関係をフレキシブルにすることで、こうした異分野融合による研究成果を更に上げやすくなりますし、その成果を積極的に外部にアピールすることも、理学部の存在感を高めることにつながるのだと思います」


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