大学改革の行方 「理科離れ」に挑む理学部の改革
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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どんな分野にも進めるのが 理学部卒業生の強み

 理学の枠を越えた研究領域の広がりを見せつつある理学部だが、卒業後のキャリア形成においては、どのような可能性を秘めているのだろうか。図2によると、「学習内容ミスマッチ」と並んでイメージギャップの大きい項目が「進路支援体制」である。これには、就職活動をどう進めていけばよいのか分からないという学生が多いのも事実だが、大学側の制度不備にも課題はあるようだ。新潟大理学部では、各学科に就職担当の教員を1名置き、相談室を設けて学生が自由に訪問できるようにして学生の就職活動をサポートしているという。「進路を決めかねている学生や、就職活動そのもののやり方が分からずに手をこまねいている学生には、教員から声をかけることもある」と谷本教授は述べる。
  もっとも、理学系出身者のキャリアルート自体は、理学の研究領域の広がりと同様の広がりを見せている。北海道大・岡田教授は「どの分野にも行けるのが理学部の強み」と強調する。
  「免許を取得することで方向性がある程度定まってしまう医学部や獣医学部などと違って、自然科学のあらゆる分野を包含している理学部は、どんな分野にも進める可能性を持っていますし、今後その傾向は更に強まるでしょう。現在、あらゆる分野の生産現場はもちろん、従来は文系の人材が行くと思われていた銀行などにも、理学系の思考を持った人が求められるようになっています。将来のキャリア形成の発展可能性が高い学部と言えると思います」
  では、今後同系統に進む学生には、どのような資質が求められるのだろうか。
  「物事にこだわれる人が、理学部には向いていると思いますね。理学の研究で成果を上げるには地道な努力の積み重ねが大切です。そういった粘り強さの原動力になるものこそ、こだわりだと思います。『これはどうなっているんだろう』『この定理は本当なのだろうか』という素朴な疑問を持ってこだわり続けてほしいですね」(北海道大・山口教授)
  新潟大・谷本教授は「興味・関心」を強調する。
  「小学生に何を知りたいかと聞くと、ほとんどが『自然』に関するものを答えます。本来、人間は自然について素朴な疑問を持つものなんですね。ですから、理学部に進学を希望する人には、是非自分の疑問を大切にしてほしいですね。もし、今の段階で、自然現象について何らかの疑問を持っている高校生がいれば、どんどん我々に質問していただきたい。また、高校から課外活動に対する協力の要請があれば、いくらでも協力するつもりです。それだけ、現在の理学部が抱いている危機感は大きいんです」


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