その一方で、生徒の学習習慣が定着するに連れ、生徒個々の学力差が浮き彫りになってきた。教師が一律に提供する内容では飽き足りない生徒と、ついてこられない生徒が出始めたのである。そこで、酒田東高校では下位層の底上げと上位層の更なるレベルアップを図るべく、9月から数学と英語で、学力レベル別の添削指導を開始した。
上位層向けの添削指導は「ヒマラヤプロジェクト」と呼ばれ、難関大志望者と進研模試7月記述で3教科総合偏差値58以上の生徒を対象とする。通常の課題とは別に、数学は週に2種類、酒田東高校独自のプリントで、英語は3か月に1冊、市販の教材に取り組む。取り組むペースは生徒の判断に任せられているが、ほとんどの生徒は定期的に提出しているという。
同プロジェクトの命名者である佐藤先生は、「ヒマラヤ山脈には8千メートル級の山が8つあります。ヒマラヤプロジェクトの名前は、センター試験で800点以上を目指すということ、そして東京大・京都大・東北大・北海道大・東京工業大・一橋大・東京外国語大・医学部という8つの目標にちなんで命名しました」と、本プロジェクトに込められた思いを述べる。
一方、下位層向けの添削指導は「リカバリープロジェクト」と呼ばれ、1学期の成績が200番台の生徒や、それぞれの教科で赤点を取った生徒などを対象に実施している。成績不振者に基礎・基本の徹底を図るものだが、課題の量や提出頻度はヒマラヤプロジェクトとほぼ同様だ。更に、2年生からは国語でも同様の添削指導を始めると共に、中間層を対象とした「サクセスプロジェクト」も始動しているという。
「『ヒマラヤ』と『リカバリー』の生徒が互いに刺激し合い、切磋琢磨することも、このプロジェクトの狙いです。『ヒマラヤ』の生徒は、自分たちが『新生・酒東』を引っ張るんだという気概を持ち、その頑張りが『リカバリー』の生徒にも刺激を与える。そうすることで、学年全体が一丸となって学習に取り組む雰囲気がつくれたのではないかと思っています」(石川先生)
指導の成果は、模試成績の上昇となって表れた。図3は進研模試の過去3年間の結果だが、7月こそ偏差値60に届かなかったものの、添削指導開始後、初めての模試である11月には、3教科総合で64と大きく躍進したのである。もちろん、過年度を大きく上回っていることは言うまでもない。
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