上記のような施策と時を同じくして、高山西高校では宮川純一先生を中心に学力の土台となる、生徒の論理的思考力や表現力を磨く取り組みもスタートした。ディベート活動がそれである。
「ディベートには、言語表現力や反駁能力など、普段の授業ではなかなか伸ばすのが難しい力を養う効果があります。また、事前の情報収集の段階でも、普段は読まない本を読んだり、情報を集めるための読書技術を身に付けられます。狭義の教科学力にとどまらない、本当の意味での学力を付ける力がディベートにはあると考えています」(宮川先生)
当初は宮川先生が担任を持ったクラスだけで行っていた活動も、生徒がディベートの全国大会に出場したり、難関大の推薦入試やAO入試で合格する生徒が現れると、次第に学校ぐるみの活動とする機運が高まっていった。そして、03年度からは活動のメインを英語ディベートに据え、04年度からはSELHi指定を受けて、更なる活動の充実が図られている。
「学力向上とディベートの相関を実証するため、本校ではあえて、習熟度別クラスの真ん中のレベルのクラスをSELHi対象クラスにしました。英語の授業のうち週1回を、英語ディベートの時間に充てています。この2年間の実績を見ると、模試の成績なども上位クラスとの差が随分縮まってきています。今後は他校と共同で英語ディベート大会を開くなど、活動の裾野を更に広げていきたいと考えています」(宮川先生)
一方、ディベートとはまた違った方法で、生徒の思考力や表現力を伸ばしているのが、生徒全員に毎日、日記を書かせる取り組みである。
「本校では、いわゆる『学習の記録』の代わりに、毎日生徒に『自主記録』という日記を書かせています。当初は毎日の学習時間や生活時間を記入するスペースも設けていたのですが、生徒によっては本当のことを書かないこともしばしばでした。そこで、どうせ書かせるなら、生徒が本当に表現したいことを書かせよう、ということで、3年ほど前から現在のスタイルに落ち着きました。毎日担任と日記のやり取りをすることで、『書く力』の育成や、生徒把握がきちんと図られるようになったと感じています」(横田先生)
図2に示したのは、実際に高山西高校の生徒が書いた日記の一部であるが、注目すべきは教師のコメントの緻密さである。「生徒の日記を読むために、1日2~3時間かけている教師も高山西高校では珍しくない」と語るのは岩坂晋先生だ。
「生徒が2~3行しか書いていないのに、教師が1ページにびっしりコメントを書くこともありますよ。そうして生徒一人ひとりをしっかり見ていくことが、互いの信頼感を生むことにつながってくるのだと思います。入学当初は2~3行しか日記を書けなかった生徒が、次第に文章が書けるようになってくるのは、教師にとっても嬉しいことですよね」(岩坂先生)
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