――新卒で会社に入ると、自分がやりたいことをやらせてもらえないという不満から、すぐに辞めてしまうという話をよく聞きます。キャリアアップしていくためには、まずどのような意識を持てばよいのでしょうか。
新卒で会社に入ったときは何もないゼロの状態からスタートするわけですから、最初の5年くらいは死にものぐるいで仕事をしないといけないと思います。最初に自分の限界に挑戦すれば、その後もどんどん限界が広がって、どこへ行っても何とか仕事をこなせるようになります。
実際、グローバルなマーケットでは人材を徐々に育てていく余裕がありません。例えばフランスのブランドものの企業では、日本はとても重要なマーケットですから、本国から派遣されてくる人は将来の幹部候補生です。だいたい35歳くらいで日本に来て5年程社長を務め、40歳で本国へ戻って上の方のポジションに就いたり、CEOになったりというのが、キャリアアップの方向なんです。ですから35歳で社長が務まるくらいの人材を育てなくてはいけない。これは日本では難しいですね。
――そういったグローバルなマーケットで通用するようになるには、具体的にはどうすればよいのでしょうか。
会社に入った第一日目から、自分が社長だったらどうするかということを考えて仕事をすることです。それは別に実際に社長に
なるということではなくて、会社を全体から眺める視点を早く育てるということです。少なくとも入社して3か月くらい経ったら、外部の人に会社のセールスポイントや、社内のビジネスの流れ、また競合の会社はどこかなどのマーケットマップを説明できるようになってほしいですね。
そういうシミュレーションは、会社が機会を与えてくれないと初めは難しいかも知れません。でも、会社が何もしてくれないというのではなく、まず自分の頭の中で考えるのと考えないのとでは、3か月でずいぶん差が出てきます。会社の資料を積極的に読んだり、先輩に教えてもらったり、自分からできる行動はいろいろあるものです。「早く育つ」ことを目指してほしいですね。
難しければ、自分が上のポジションに行ったときにどういうことを要求されるか、部下には何をしてほしいかということから考えてみてはどうでしょう。反面教師の上司がいるかも知れません。それもひとつの勉強の過程ですから、最初の5年は自分のキャリアの礎をつくると思って、がむしゃらに働くことを勧めます。
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