――出前授業やオープンキャンパスなど、いわゆる「イベント型」の高大連携は、ここ数年で随分拡大しました。しかし、高大が互いの教学内容やカリキュラムについて話し合う連携となると、事例は限られるようです。そんな中、広島県では、高校の授業の進め方や評価規準について、高大が協同で研究する段階まで連携が深まっているそうですね。「教科指導研究事業(高大教員共同研究)」と言うそうですが、まずはこの取り組みが始まった背景をお聞かせください。
小路口 元々この取り組みは、01年度に県教委の事業としてスタートしたものです。英・数・国の3教科の指導法について、高大の教員が意見交換をしながら、改善策を模索していくのが目的でした。私は国語担当としてこの事業に関わりましたが、個人的な問題意識として、従来型の知識注入による「偏差値を上げる」授業手法に限界を感じていました。補習も、小テストも、学習合宿もしっかりやって、生徒が何とか志望大に入れるように努力しているわけですが、01年に生徒にアンケートを行ったところ、学力の伸びを実感している生徒はあまりいなかったんです。また、必死で頑張っている割には、大学の先生からは「高校では生徒の学力を全然伸ばしていない」なんて言われてしまう(笑)。「大学が求める学力」とは何なのか、そして、その力を伸ばすための授業をどのように実現するのか。今一度考え直す必要を感じていました。
杉原 当時私は県教委にいて、この事業を推進する立場でした。問題意識として持っていたのは、いわゆる「イベント型」の高大連携をいくら推進しても、一つの高校の教育全体に与える効果には限界があるという思いですね。確かに、高校生の進路意識の育成という観点からは、出前授業やオープンキャンパスを評価できるのですが、高校と大学の教学内容の接続や、高校の授業改革を支援する効果は限定されたものです。また、同じ高大連携と言っても、大学の広報活動色が全面に出ているような取り組みも少なくありません。このような限界を超えるには、授業やカリキュラムに関して踏み込んだ話し合いをすることが不可欠です。「教育接続」に実効性の上がる連携が必要だと考えていました。
|