指導変革の軌跡 愛知県立豊田南高校「中高連携」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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自ら中学校に足を運び中学生把握に努める

 中学校教師による講演会により、中学校の指導の実態を把握することができた。しかし、中学生の実態を把握するには、教師自ら中学校へ足を運び、直接中学生と接する必要がある。そこで、豊田南高校では講演会に引き続き、地元中学校へ出向いての授業参観と教科研究・情報交換会、及び出前授業を実施した。04年度は英数国の3教科について各1校、05年度は理社について各1校、2年間で計5校の中学校を訪問したのである。
  教科研究・情報交換会では「中学校の授業の進め方、内容、レベルを把握することができたのが最大の成果」と藤嶋先生は述べる。
  「一斉授業が少なく、積極的な発問・発表が多い。毎時間扱う教材の内容が少なく、授業進度は緩やか。授業参観では、こうした授業の特徴の一つひとつに驚かされました。また、中学校の先生方との情報交換会では、お互いざっくばらんに感想を述べ合うことで、中学校の先生方との共通理解も深まりましたね」(藤嶋先生)
  更に、豊田南高校教師の中学生理解を促したのが「出前授業」だ。高校における授業を中学3年生用にアレンジし、高校の授業がどういうものかを知ってもらうことが目的だ。05年は、数学・英語・理科各2名の教師が近隣の中学校へ出張し、中学校の選択授業の時間を使って、1コマずつ授業を行った。ただし、数学だけは2コマを使い、異なる性格の授業を実施したという。
  「一つは興味・関心を高めることを目的とした楽しい数学、もう一つは比較的レベルの高い高校の数学を実施しました。後者については、私から見ても難しすぎたような感があったのですが、意外なことに評判はよかったですね。中学生も易しい内容の授業だけを求めているわけではなく、高度な内容であっても、どんどん吸収したいという意欲を持っている。そんな手応えをつかめたことも、出前授業の成果の一つだったと思います」(朴井校長)
  「出前授業」は、生徒の評判も上々で、「高校への進学意欲が高まった」「高校の授業について行くには、中学時代の基礎が大切だということが分かった」といった前向きな感想が寄せられた。豊田南高校の教師が大きな成果を得た以上に、中学生が学んだものも大きかったのである。

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▲中高連携事業の「出前授業」数学の風景。数学では難易度の高い授業と
楽しい授業の2パターンを実施し、生徒の関心の度合いを測った

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