更に、中高連携の取り組みは、進路指導を軌道修正する役割も果たした。豊田南高校の進路指導の方針は伝統的に、特定の職業にターゲットを絞って、それに基づいて志望大決定をするのではなく、偏りなく学問や職業を見渡し、幅広く大学進学を考えさせるというもの。そのため、豊田南高校では過去10年以上に渡って、自校で策定した職業観育成のプログラムに基づく系統的な進路指導を行ってきた。
しかし、近年は「進学は目的を達成するための手段と捉え、大学を専門学校のように扱う考え方が強くなってきた」と、進路指導主事の粟生康弘先生は指摘する。
「特に強く感じるのは、生徒の進路の捉え方が非常に資格重視に偏ってきたということです。そのため、幅広く大学進学を考えさせるという本校の進路指導の方針に、馴染めない生徒が増えていました。これには、近年中学校で盛んに行われているインターンシップなどの職業観育成プログラムが大きく関わっていると思いますね。『将来、何になりたいのかを決めなければ大学に行っても意味がない』という考え方が、生徒にも保護者にも浸透しているのではないかと思うんです」
そもそも、将来どんな職業に就くかを決めてから大学を選べというのは、高校生には非常に難しいこと。しかし現実には、高校進学段階で既に「看護師になりたい」「社会福祉士の資格を取りたい」などと決め込んでしまっている生徒が多いのだという。
そこで、05年の進路講演会では、医療・看護系の進学希望者のみを対象としたガイダンスを実施した。看護・医療系の学部を志望する生徒があまりにも多いために急遽実施した取り組みだが、無論これは、学部内容や資格の取り方をレクチャーするものではない。むしろ、現場の第一線で働いている社会人の口から、現場の仕事の大変さや責任の重さを語ってもらい、生徒に自らの適性を振り返らせるきっかけを与えるためのものなのである。
「ガチガチに凝り固まった生徒の職業観を解きほぐし、広い視野を持って自分の将来像をつくり上げていける職業観を、生徒に身に付けさせることが大切」と、粟生先生は強調する。
|