だが、自由度の高いカリキュラムを機能させるためには、生徒の側にも高い自主性が要求される。入学時点である程度志望進路を固めている福岡魁誠高校の生徒とは言え、いきなりカリキュラムを決められる力が備わっているわけではない。そこで福岡魁誠高校では、入念なカリキュラムガイダンスに加え、「総合的な学習の時間」や「産業社会と人間」の時間を進路学習に充てることで、生徒の自主性や進路設計能力を伸ばそうと試みている。
「カリキュラムの決定に当たっては、『大学進学に必要な科目は何か』『資格取得のために必要な科目は何か』といった知識の他に、将来はどういう人間になりたいか、という『志』が必要ですよね。同じ『医者になりたい』という動機でも、本校の生徒には、更にその先にある『人の命を救いたい』という点を強く持ってほしいんです。『産業社会と人間』の狙いはあくまでもそこに置いています」(寺本先生)
そうした狙いに基づき、福岡魁誠高校では、「産業社会と人間」の時間を使って実施する上級学校訪問や職場訪問を、カリキュラム決定の重要な契機と位置付けている。すなわち、カリキュラムの決定を、7月の「仮登録」、10月の「本登録」の2段階に分け、上級学校訪問や職場訪問は、その間の夏休みを使って行うプランとなっているのだ。つまり、上級学校訪問や職場訪問は、一度決めた進路に対する「揺さぶり」の機能を担っているのである。ガイダンス部主任の池長嘉晴先生は、その点について次のように説明する。
「『職場訪問をすると、すぐに就職したがったり、専門学校に行きたがったりするのではないか』と考える人もいますが、むしろ、社会人から『今後は大学に行かなければダメだ』というアドバイスをもらって、進路を考え直したりする生徒も少なくありません」
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