ベネッセ教育総合研究所
理数教育の展望
有本健男
文部科学省科学技術・学術政策局長
有本建男
ARIMOTO TATEO
ありもとたてお◎1948年広島県生まれ。京都大大学院理学研究科修士課程修了。海洋科学技術センター企画部長、日本原子力研究所広報部長、科学技術庁政策局政策課長、内閣府大臣官房審議官(科学技術政策担当)、文部科学省生涯学習政策局審議官などを経て現職。著書に『高度情報社会のガバナンス』(NTT出版・共著)など。
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SSH スペシャル インタビュー 3rd viewpoint
行政が考える役割
人材枯渇の時代に向けて、連続性ある教育事業が必要
 改革の一つと呼ぶにふさわしいインパクトを持った事業、SSH。行政はなぜ今、このような施策を打ち出してきたのか。そして、SSHで何を見いだし、どのように今後に結び付けることを考えているのだろうか。文部科学省科学技術・学術政策局長の有本建男氏に事業の狙いと展望を聞いた。

連続性を持った政策としてのSSH
―政策的な観点からSSHの意義を改めてお聞かせください。

有本 現代は、私たちの生活と科学技術が極めて密接に結び付いている時代です。環境汚染や震災や異常気象、そして世界各地で起こるテロなど、人類は共通の課題を数多く抱えています。それらを解決する手段として、科学技術に対する期待は大きくなっています。
 我が国では06年に人口が1億2600万人に達した後、07年から急激な減少傾向に転じ、50年には1億人を割ると予想されています。そして現在、約270万人と言われる研究者・技術者が、170万人程度に減少してしまうと考えられています。人口減少と少子高齢化が進む中で、次代の科学技術を担う人材をどのようにして確保していくかという、言わば人創りの問題が国家として政策的連続性の求められる大変重要なテーマとなってきています。
●今後の研究者・技術者数の推移予測
図表
 これまでは理数系の人が専門知識を生かす進路といえば、研究者や大学教員などといったアカデミック(学術)系の進路しか意識されていませんでした。しかし、近年では非アカデミック系の進路、例えば企業の経営者やマスコミ、法務、行政など多様な分野で理数系の人材の重要性が高まりつつあります。アメリカでは、理系の博士号を取った人の3割は非アカデミック分野に従事しています。科学技術の専門知識を持った人たちが社会の様々な分野で活躍するようになるはずです。
●人材の活躍の場の多様化
 科学技術と社会の関わりが深化・多様化する中、科学技術・学術活動を担う人材の活躍の場も多様化している。
図表
 そのような変化の中で、高校での理数教育はどうあるべきなのでしょうか。私は、高校という段階を、豊かな人材を育む「貯水池」であると捉えています。この部分が枯渇してしまうと、国も企業も立ち行かなくなってしまう。高校段階で豊かな人創りを行いながら、大学の学部、修士、博士まで「連続性」を持った政策で若者たちを育てていかなければなりません。その政策の一つが、SSHなのです。


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