特集 「完全新課程生」をどう育てるか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「自ら選び取る」習熟度別授業の講座選択

 上野高校の教師たちがまず取り組んだのは、学力の多層化、とりわけ、増加した下位層のフォローをどのように行うかだった。
  「課題や補習でのフォローももちろん大切ですが、何より授業の中でのフォローが大切だと考えました」(沢井先生)
  そこで上野高校では、05年度より数学について習熟度別授業を導入。1学期の中間考査後から実施した。
  上野高校は1学年9クラス。それを数学については3クラス4講座展開とし、「標準」講座が2講座、「応用」講座が2講座設置された。また、講座分けに際しては、単に学力別に生徒を振り分けるのではなく、生徒の希望に応じた講座編成を心掛けたという。
  「基本的には生徒一人ひとりに希望を聞いた上で、どちらの講座を受講するのか選択させました。教科学習に対する能動性を、『自ら選び取って受講した』という経験を積ませることで伸ばそうと思ったんです。実は本校では、約10年前まで習熟度別授業を実施していました。しかしその当時は、単純に成績順で講座編成をした結果、さまざまな理由でうまく機能しなくなってしまったのです。05年度の取り組みには、当時の反省が生かされています」(沢井先生)
  とは言え、安全志向の強い昨今の生徒たち。最初に希望を募った時点では、「応用」講座を選んだ生徒は少なく、多くの生徒が「標準」講座を選択した。そこで学年担当の数学教師たちは、実力的に「応用」講座を目指せる生徒については、逐一個人面談を実施して受講講座について話し合ったという。
  「年度途中での講座の入れ替え方法など、次年度に向けていくつか考えなければならないこともあります。しかし、少なくとも生徒の意識面に対する効果については確実な成果が上がっていると思います。実際、第2回スタディーサポートによれば、習熟度別授業を実施した後で、『数学が嫌いだ』と回答する生徒が10%ほど減少していました。その一方、『数学が好きだ』という生徒は3%ほど増加しています。自ら選び取って学んだという意識が、授業への取り組みにも反映されているのだと思います」(沢井先生)
  成績の面でも、当初は3つあった度数分布の山が、徐々にまとまりつつあるという。


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