以上のような対応の他、上野高校では、03年度からスタートした「新入生保護者アンケート」の一層の活用、スタディーサポートと面接のリンク、進路シラバスに基づく指導の目線合わせの徹底といった取り組みが、05年度の重点課題として挙がっている。しかし、これらの取り組みを実施しつつも、05年度新入生の模試成績は「何とか持ちこたえている」というのが教師たちの実感だという。沢井先生はそれを「1度でいいから上昇に転じさせたい」と考えている。
「教師側の問題もありますが、私が気にしているのは生徒の気質の問題です。近年の生徒は『努力しても報われない』と思うとすぐに諦めてしまうので、模試成績の面で『頑張れば、結果が出る』という経験を積ませたいんですよね。実際、本校の過去の学年に照らしても、3年間のどこかで1度でも全体成績が上がった学年は、進路実績も伸びるんです」
そうした思いから、同学年が他校の実践から学び、年度途中の10月からスタートさせたのが「学力検討会」という取り組みだ。2週間に1度、学年の進路係、国・数・英の担当、学年主任、進路主任の計8名が集まり、模試やスタディーサポートのデータを基に、各教科の指導方針を話し合うというものだ。少人数なので集まりやすく、また、「学年」という共通のくくりがあるので、他教科の問題点も指摘しやすいのがポイントだ。
「本校では各教科の指導については教科会で話し合って決めていますが、それでは教科間比較の視点が得られませんし、他教科の指導内容についても口が出しにくいですよね。しかし、学年内の会合であれば『最近英語が弱いけどどうなの?』『数学が調子良いけど、同じことを国語でも真似してみようか』といった会話がしやすくなります。また、少人数での会議なら『年度途中だから』『とりあえず様子を見て』という消極的な発想に陥らずに、フレキシブルな動きができます」(沢井先生)
スタートして半年程の取り組みだが、模試の事前対策や、終了後の講評・復習の方法などが、各教科共通の手法で行われるようになった。最後に、沢井先生は次のように語った。
「生徒が変わってきたんだから仕方がない、という発想に陥ったら何も生まれません。我々教師は『だからどうするんだ?』という問題意識を常に持っていなければなりませんよね。生徒が変わっていくのと同様、学校も変わっていかねばならないと、05年度を通じて強く感じています」
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