では、「大学院教育の実質化」を促すために、今後、どのような取り組みが展開されていくことになるのだろうか。ポイントは、(1)コースワークの充実、(2)円滑な学位授与の促進、(3)教員の指導力向上の3点である。
(1)コースワークの充実
コースワークとは、学修課題を複数の科目等を通して体系的に履修することで、主要な研究分野だけでなく、その関連分野についても基礎的な素養を身に付けることを目指すものである。教育の組織的展開を図る上で、最も重要な方策であると言えよう。各大学院においては、例えば、前期はコースワークに比重を置き、後期は研究活動に専念する、あるいは、前期・後期を通じたコースワークを設定するなど、人材養成目的や専攻分野の特性に応じた効果的なコースワークを行うことが求められる。
(2)円滑な学位授与の促進
「課程制大学院制度」の趣旨に照らせば、博士の学位は本来、自立して研究活動を行い得る研究能力と、その基礎となる豊かな学識を身に付けた者に贈られる。言わば「研究者としての出発点」となるべき資格である。しかし、学問分野によっては必ずしも円滑な学位授与が進んでおらず、特に人文科学系の分野では「研究者として名を遂げた大家に贈られる勲章」(山崎氏)というイメージが強い。また、留学生の博士学位授与率が低下傾向を示している分野もある。
今後は、学位に対する本来の趣旨を徹底し、学位論文の進捗状況に関する中間発表を実施するなど学位授与へ導く教育プロセスを再点検することが求められる。また、オフィスアワー(※2)を設定したり複数教員による論文指導体制を構築したりするなど、教育・研究指導を適切に実践する工夫も必要だ。
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