大学改革の行方 教育の充実に動き出した大学院

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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専攻の目的に基づいて教育プロセスを構築

 では、「大学院教育の実質化」を促すために、今後、どのような取り組みが展開されていくことになるのだろうか。ポイントは、(1)コースワークの充実、(2)円滑な学位授与の促進、(3)教員の指導力向上の3点である。

(1)コースワークの充実
  コースワークとは、学修課題を複数の科目等を通して体系的に履修することで、主要な研究分野だけでなく、その関連分野についても基礎的な素養を身に付けることを目指すものである。教育の組織的展開を図る上で、最も重要な方策であると言えよう。各大学院においては、例えば、前期はコースワークに比重を置き、後期は研究活動に専念する、あるいは、前期・後期を通じたコースワークを設定するなど、人材養成目的や専攻分野の特性に応じた効果的なコースワークを行うことが求められる。

(2)円滑な学位授与の促進

  「課程制大学院制度」の趣旨に照らせば、博士の学位は本来、自立して研究活動を行い得る研究能力と、その基礎となる豊かな学識を身に付けた者に贈られる。言わば「研究者としての出発点」となるべき資格である。しかし、学問分野によっては必ずしも円滑な学位授与が進んでおらず、特に人文科学系の分野では「研究者として名を遂げた大家に贈られる勲章」(山崎氏)というイメージが強い。また、留学生の博士学位授与率が低下傾向を示している分野もある。
  今後は、学位に対する本来の趣旨を徹底し、学位論文の進捗状況に関する中間発表を実施するなど学位授与へ導く教育プロセスを再点検することが求められる。また、オフィスアワー(※2)を設定したり複数教員による論文指導体制を構築したりするなど、教育・研究指導を適切に実践する工夫も必要だ。

※2 オフィスアワーとは、授業科目などに関する学生の質問・相談に応じるための時間として教員が設定するもの。教員はあらかじめ特定の時間帯を示し、その時間帯であれば、学生は予約無しで研究室を訪問することができる。

(3)教員の指導力向上
  「大学院教育の実質化」を進めるには、まず大学教員の意識改革が必要なことは前述した。意識改革を促す上で欠かせない取り組みが、教育内容・方法などに関する組織的なFD(ファカルティ・ディベロップメント)だ。現在、学部段階では導入が進んでいるが(02年度時点で67%の大学が導入)、今後は大学院においてもFDの普及を促進していくことが重要になる。また、学生に対する授業方法や成績評価基準、論文審査プロセスの明示も必要である。

  以上、3点が大学側に課された改善点の大枠であるが、これらの活動を進めるための前提として大切な要素がもう一つある。
  「組織的な教育体制を構築するためには、何よりもまず、各大学院がそれぞれの研究科・専攻の目的を明確にし、育成したい人材像を具体化することが前提となります。その目的を達成するために効果的な教育プログラムを編成し、円滑に学位授与へと導いていく。一連のプロセスが明確になれば、入試で問う力を受験生に示すこともできますし、育成する学生像を明示して産業界など社会にアピールすることも可能になると思います」(山崎氏)
  更に、こうした入り口から出口に至るまでの一貫したプロセスを開示することで、答申の第2の眼目である「大学院の通用性・信頼性」も高まっていくのである。


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