指導変革の軌跡 青森県立三本木高校「考える力の育成」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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パネルディスカッションで生徒の思考力を伸ばす

 改革1年目となった02年度、森先生たちがまず取り組んだのは、生徒が主体的にものを考えられる行事やイベントをできるだけ多く実施することだった。当時は「総合的な学習の時間」の導入前だったが、LHRや特別活動の時間をやりくりして時間を確保。先進校の事例を参考に、社会人を招いた職業講演会や、卒業生との懇談会を次々に実施していった。中でも最も大きな成果を上げたのが、年間で計3回実施したパネルディスカッションだった。小野寺昭夫先生は導入の狙いを次のように語る。
  「パネルディスカッションで狙ったのは、表現活動を通じて、生徒の思考力を伸ばしていくことでした。3年後の推薦入試やAO入試を意識して指導改革を進めていた我々ですが、決して『受験対策』的な指導を目指していたわけではないんです。むしろ、狭義の教科学力にとどまらない、骨太の学力を伸ばしていこうと考えていました」
  こうしたコンセプトを踏まえ、ディスカッションのテーマは、「まず生徒が食いつきやすいものを」(森先生)ということで、「将来どんな職業に就きたいか」「地域の活性化のためにできること」「制服について」といった、日常生活に密着したテーマが設定された。また、パネルディスカッションという手法そのものに馴染みの薄い生徒が多かったため、まずは問題意識の高い生徒が集まる理数科が取り組みを先行実施し、その様子をモデルとして、他の生徒に見せるという手法が取り入れられた。
  「パネルディスカッションの基本的な流れは、クラス内で5~6名の班をつくり、班ごとに一度議論。そこで出た話し合いの内容を基に、今度は各班ごとの代表者がパネラーとして、他の生徒の前で議論するという形です。学年集会の場を使って、理数科の生徒に一連の流れを実演してもらい、それを手本に普通科の生徒たちが取り組みました」(小野寺先生)
  こうした配慮が奏効し、初めての試みにもかかわらず生徒の多くは比較的スムーズにパネルディスカッションに取り組めたという。実際、2回、3回と経験を積むに連れて、講演会などで積極的に発言できる生徒が徐々に増えていった。
  「従来はサクラの生徒を用意しなければならなかったような場面でも、積極的に講演者に質問したり、議論したりできる生徒が増えてきました。他者の言っていることをきちんと聞いた上で、自分なりの考えをまとめて言語化することの積み重ねが、そうした変化につながったのでしょうね」(森先生)


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