指導変革の軌跡 青森県立三本木高校「考える力の育成」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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学習面でも主体性が育った2年目

 1年目の成果を踏まえ、2年目以降は更なる取り組みの深化が図られた。「総合学習」の時間枠を活用して、パネルディスカッションを引き継ぐ形で実施されたディベート活動、現役大学生による講演会や職業体験学習、平和学習にテーマ性を絞った修学旅行の再編や大学見学会などが矢継ぎ早に実行されていった。また、3年次には、県知事を招いた「知事懇談会」も行われた。02年度入学生の3年間の動きをまとめたのが下の図1であるが、ゼロからのスタートとしては驚異的なペースでさまざまな取り組みが実行されていったことが分かる。

図1

  更に、三本木高校の取り組みで着目すべきは、こうした改革の陰で削減されがちな、従来からの学校行事も、充実・強化されていった点である。
  「新たな行事を導入するに当たり、時間的に厳しい面もあったのですが、遠足や耐久歩行といった活動もできる限り充実させました。自分は高校生活でこれをやり遂げたと、自信を持って語れる体験を積ませたかったのです。また、賛否両論はありましたが、『飲料不可』の水道しかない山奥のキャンプ場を遠足の行き先にあえて選び、事前にどれだけの水や食材を準備し、どんな下準備をしたら自炊できるかを生徒に考えさせるといった取り組みも行いました。通り一遍の課題ではなく、これまで受けてきた授業や生活の知恵を総動員してものを考える機会を与えたかったのです」(森先生)
  一方、こうした活動は、学習面での生徒の主体性を伸ばすのにも効果があったようである。福島智先生は、授業の中で生徒たちの変化を感じていた。
  「地域柄か、本校には非常に素直な生徒が多いのですが、教師に言われたことや、与えられた課題以上のことをやる貪欲さには欠けている面がありました。しかし、ディベートや体験学習を続ける中で、『自分で学習法を工夫する』姿勢が伸びてきたように思います。実際、『教師は質問に応じるだけ、あとは自分のやりたいことを学習する』というコンセプトで実施した3年次の夏の学習合宿にも、160名もの生徒が参加してくれました。今までであれば『何も教えてくれないなら行く意味がない』と考える生徒が大半だったと思います」

写真
「表現する活動」を通して、自らの頭で考える経験を積ませていく。これまでどちらかと言えばおとなしい生徒が多かった三本木高校だが、こうした経験を通じて発言を恐れない姿勢が育っていった。

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