「これまで推薦入試やAO入試に対する意識が低かっただけに、指導方針が変わったことを強く意識付けることが必要だと考えました。今後の指導スケジュールをプリントして学年集会、保護者連絡会で配付し、推薦入試やAO入試が決して特殊な制度ではないことを説明しました」(森先生)
とは言え、三本木高校の教師たちは、ただ安直に「積極的に推薦・AOを使おう」と呼びかけたわけではない。むしろ、積極的な出願を促しつつも、相応の「覚悟」を生徒には求めたという。
「推薦・AOに出願する生徒はもちろん、私立大の指定校推薦を受験する生徒にも、『日頃の学習量を減らすことは許さない。その上で、志望理由書を書いたり、面接・小論文を行う覚悟はあるのか』と確認しました。また、たとえ推薦やAOで合格しても、皆と一緒にセンター試験を受験することも、この時点で生徒たちには伝えておきました。こうした形で最後まで学習に取り組ませることは、当の生徒が『推薦・AOに落ちたショックで一般入試も失敗』という悪循環に陥るのを防ぐ意味で重要です。もちろん、最後まで学年としての一体感を維持するためにも重要ですから、こうした事前の意識付けには力を入れましたね」(小野寺先生)
また、生徒の自発的な出願を待つのみならず、教師側からも積極的に生徒への声かけを行ったという。
「教師から見て、推薦入試やAO入試への適性が高い生徒には、こちらから積極的に声をかけていきました。中でも、マーク模試の成績はよいのに記述模試が苦手な生徒、ディベートで活躍した生徒、大学に対する志望動機がしっかりしている生徒には重点的に声かけを行いました。こうした生徒は従来型の学力入試では、実力を発揮し切れない面もあると思います。推薦・AOでこそ実力を発揮できるのだという考え方で、出願するよう声をかけていきました。個別面談を実施して話し合ったのはもちろん、時には3者面談を行って保護者の理解を求めることもありました」(福島先生)
このような努力の結果、9月の校内での出願締切りの時点で、1学年274名のうち82名もの生徒が推薦・AO入試に出願した。例年、20名前後の出願数にとどまってきたことを考えると大きな変化であった。
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