教師の指導力向上を図るに当たって、関西大倉中学・高校が重視したのは、英数国3教科だ。特に、数学は理系の生徒はもちろん、文系の生徒にとっても得意教科にできれば入試に有利に働く。
数学科の主任を務めていた中山照久先生は次のように語る。
「教科主任になった当時は、まだ年齢が三十代前半ということもあり、自分自身の力不足を感じていました。その中でどうすればベテランの先生方の指導力を学び取ることができるかということを日々考えていました。私自身、聞こうと思ったときでも聞きそびれたり、この問題は自分で解決すればいいと考えることもしばしばありました。そこで主任として意識したのは、教員同士が互いに学び合える環境をつくること。
教師は皆、自分なりの指導法を確立しているので、機会をつくらないとほかの教師に不安な点などを聞きづらいものです。指導法に正解がないからこそ、意見を交換し合うことが大切だと考えました」
そこで実施したのが研究授業だ。通常の授業をほかの教師が見学し、授業後に意見交換を行ったり教科会議の時間に研究発表を行ったりした。
「ベテランの先生からは『ここをもっとこうすればいいんじゃないか』などのアドバイスを頂きました。現在では若い教師の授業を見学する中で『きちんと板書しながら丁寧に教えることが多いな』など若手からも多くのことを学んでいます。
また、定期考査の分析会も数学科全体で実施しました。『基本問題が多すぎるのでは』『教科書の問題と似すぎているのでは』など、問題を細かく分析しました。生徒に考えさせる問題、しっかりと記述させる問題を出題しようという方針を確認し、その上で、どのような問題が定期考査では適当かを考えていったのです」(中山先生)
更に、大学の入試問題や実力テストの分析会も行い、模範解答以外の解き方を互いに出し合った。ときには、一つのテーマで議論が白熱し、話し合いが夜遅くまで及ぶこともあったという。
今では数学科に限らず、教師が空き時間を使ってほかの教師の授業を見学したり、遠慮がちになる若い教師に、ベテラン教師が積極的に声をかけたりするなど、風通しのよい環境となってきた。教師の意識も向上し、チャイムが鳴る前に教室の前で待機している教師が増えたという。
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