指導変革の軌跡 熊本県立苓洋高校「進路意識向上」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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活発な活動を支える教師のチームワーク

 次の新しい活動も始まっている。その一つが、生徒・教師・保護者の三者を結ぶコミュニケーションツールとなる「進路希望表」だ。
  「進路に関して保護者と生徒の意見が食い違ったとき、十分な助言ができればと思ったのがきっかけです。事前に生徒が自分の進路希望を記入し、保護者はそれを見た上で面談に臨むので、話がスムーズに進むようになりました。また、保護者と電話などで話すきっかけにもなっています」(上村先生)
  保護者との話を通じて、進路についての基礎知識が乏しいことを実感。早速、就職・短大進学・4年制大進学の希望進路別に、企業や大学の状況、入社試験や入学試験合格に向けて必要なこと、奨学金制度などをまとめた面談資料を作成した。また、校内の教師全員が1人につき3年生4人程度を担当し、進路についての相談に乗る個別進路指導の徹底など、次々と新しい活動が生まれている。
  これらの活動の源は、進路指導部のチームワークだ。「校内検定取得級と学習到達ゾーンとの関連」を示す資料は、こんな経緯で生まれた。
  「雑談中に私が『こんな資料があると便利だ』と思いつきで話した数日後、金子先生がその資料をつくってくれたのです」(上村先生)
  「確かに、生徒や保護者と話をするとき、具体的な根拠があると説得力があると思い、データを分析してみたのです。すると、きれいに相関関係が出たので、これは使えると思いました」(金子先生)
  3人の間には、アイディアを出す上村先生、データ分析の金子先生、それを校内に普及していく前田先生という絶妙の役割分担がある。特別に会議をしなくても、雑談の中からアイディアが生まれ、それをすぐに実行に移し、よいと判断したら広めていくことができる。
  「互いに自分の持っているものを隠さないようにしています。データ分析の方法や学級通信に使ったネタなどのアイディアも出し合っています。1人では発想は限られますが、3人いれば一つのアイディアがどんどん広がっていくんです」(金子先生)
  そんな結束の裏には、学校を移っていった先生への熱い思いもある。
  「校内検定を立ち上げた先生は、本校に今はいません。先生方が続けてきたことを私たちがもっと発展させ、本校の生徒を育てなければならないという気持ちです」(上村先生)
  校内検定は、現状に危機感を抱いた教師が知恵を出し合うことから生まれた。それが、彼らが去った今も、更なる発展を続けている。校内検定の制度だけでなく、教師の個性が生きる「チーム」づくりが、次の「代」へと受け継がれていくことこそが、苓洋高校の実践を支えているのだ。


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