最近、「学校経営」という言葉が盛んに使われるようになりました。しかし、私は学校現場で「経営」の意味が誤解されているように感じています。
企業は、ミッションとビジョンを掲げ、それに沿って行動計画を立て、実行していきます。そして、結果を評価して改善点を洗い出し、次の行動計画に反映させていきます。この企業経営の手法を学校にも取り入れようとしているわけです。それ自体は大変良いことだと思いますが、一方で、私は「学校は企業と同様の経営手法ではうまく機能しない」と考えています。
私は、「学校経営」は基本的に学校にかかわる人々が全員で知恵を出し合いながら、ビジョンと目標をつくり上げていく形でしか、成り立たないと考えています。どんなに立派なビジョンと目標、行動計画を掲げたとしても、それが生徒の実態や教師の課題認識とずれていれば、絵に描いた餠(もち)に終わってしまう危険性があります。なぜなら、学校は日常の生徒の変化に応じて、日々の課題解決を行っていく必要があるからです。だからこそ、ビジョンと目標は柔軟なものでなければなりません。そうでなければ、現場のリアリティーと乖(かい)離したビジョンと目標だけが、一人歩きしてしまうおそれがあるでしょう。
学校のビジョンと目標は、教師が意思決定をするときのより所となり、教師のやる気を高めるものであることが重要です。リーダーである校長の中には、生徒の実態や社会環境の変化などを的確に捉えて、方向性を示せる人もいるでしょう。しかし、現代は一部の人だけが現場の課題解決を主導していく形では、激変する社会環境や生徒育成上の課題にうまく対応していくのは難しい時代です。
高校には多様な経験や発想を持ち、生徒とかかわっている教師がいます。さまざまな教師が持つ潜在的な能力を引き出し、集めることで、困難な問題に取り組むことが可能なのです。
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