学校は、これまで組織としてのビジョンと目標を持つ視点や、それを柔軟に見直す視点が弱かったようです。そのため、分掌や学年、クラス担任がそれぞれの考えで指導にあたり、学校としてのベクトルが結果としてブレることもあったと思います。授業や行事などを円滑に行う「運営」はあっても、「経営」はなかったのです。
しかし、学校は今、非常に難しい時代を迎えています。子どもたちは将来に希望や見通しを立てられず、だから学習意欲も高まらない。進学校でさえも学力層が広がり、「自律的に勉強できる生徒」は少なくなってきています。これは担任や進路指導部だけが頑張れば生徒の姿勢が変わる、というものではありません。
保護者の意識の変化も大きな問題です。「子どもにとって学校は大切」という意識の薄い保護者や、学校に最初から不信感を抱く保護者も増えています。これも個々の教師の対応で解決できる問題ではありません。
もっと大局的にいえば、どこに向かって子どもたちを教育していけばよいのか、社会全体が羅針盤を失っている状況なのではないでしょうか。学習指導要領を読み込んでも、どんな人材を育成したいのか見えにくい。地方分権や学校の裁量権拡大に伴って、個々の学校が育てたい人材像を自分たちで描くことが、今後一層求められるでしょう。そのため、ビジョンと目標を持ち、教師がその達成に向けて、意欲を持って潜在的な能力を発揮する「学校経営」が有効なのです。
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