特集 「学校力」を考える(2)「学校経営力」を高める


東京都・私立 鴎友学園女子中学校・高校

◎2006年に創立71周年を迎えた。「慈愛と誠実と創造」を校訓として、創立以来、社会で活躍できる女性の育成に力を入れている。キリスト教を「心の教育」の柱に据えた全人教育を展開する。

設立● 1935(昭和10)年

形態●全日制/普通科/女子

生徒数(1学年)● 約240名

06年度進路実績●国公立大には東京大3名、横浜国立大4名、京都大1名、首都大学東京9名など、65名が合格。私立大には青山学院大23名、慶應義塾大38名、上智大35名、早稲田大55名など、延べ791名が合格。

住所●東京都世田谷区宮坂1-5-30

TEL●03-3420-0136

WEB PAGE●http://www.ohyu.jp/


清水哲雄

▲鴎友学園女子中学校・高校校長

清水哲雄

Shimizu Tetsuo

教職歴38年目。東京私立中学高等学校協会庶務・会計部長を兼任。「目を輝かせて生活する生徒を育てたいですね」

吉野明

▲鴎友学園女子中学校・高校教頭

吉野明

Yoshino Akira

教職歴33年目。「大きな夢を描いてチャレンジする生徒になってほしい。そんな生徒を応援したいと思っています」

松本和夫

▲鴎友学園女子中学校・高校

松本和夫

Matsumoto Kazuo

教職歴24年目。研修会係、校務係等を担当。「高い視点を持って、あきらめずに頑張る生徒を育てたいですね」

弓削多一朗

▲鴎友学園女子中学校・高校

弓削多一朗

Yugeta Ichiro

教職歴22年目。鴎友学園女子中学校・高校に赴任して20年目。高校進路指導部長。「建設的な夢を描ける生徒を育てたい」

黒田和芳

▲鴎友学園女子中学校・高校

黒田和芳

Kuroda Kazuyoshi

教職歴20年目。鴎友学園女子中学校・高校に赴任して20年目。中学校進路指導部。「与えられるだけでなく自分で工夫する力を育てたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【学校事例2】


東京都・私立 鴎友学園女子中学校・高校

ゼロベースでの議論を避けず、ボトムアップ型の学校経営を図る

現在、高い進学実績と生徒の満足度を得ている
鴎友学園女子中学校・高校。校内での徹底した議論で教育の本質を
掘り下げ、SIを確立した鴎友学園女子中学校・高校の学校経営上の強さを探る。

  鴎友学園女子中学校・高校は、キリスト教精神による全人教育を行っている中高一貫の私立校である。この15年間で進学実績を徐々に向上させてきた。15年前には10名に満たなかった国公立大合格者が、06年度入試では65名となり、難関私立大合格者は10倍に増加している。
  これまで、鴎友学園女子中学校・高校は本来の教育とは何かを突き詰めて考え、自校の教育方針を学校内外に示しながら学校経営を進めてきた。そこで、鴎友学園女子中学校・高校の学校経営上のポイントがどこにあるのか、改革の流れに沿って見ていく。

1 生徒の実態に 即したSIの 具現化を図る

 80年代後半は、鴎友学園女子中学校・高校にとってSI確立期だった。当時、多くの私立高校は「受験学力重視」に傾いていた。その中で、鴎友学園女子中学校・高校は「生き方重視」の教育方針を学内外に明示し、他校との差別化を明確に打ち出していった。
  「当時、本校では中学入試に受験生が集まらず、高校入試でも併願者が多数を占めていました。そのため、近い将来、少子化が進行すれば、学校の存続にかかわるという危機感があったのです」(吉野明教頭)
  しかし、校内のコンセンサスを形成するのは容易なことではない。それを可能とした学校経営上のポイントの一つは、清水哲雄校長が「理念の現在化」と呼ぶ手法である。
  「当時、多くの私立校が進学実績の向上という目標を掲げたり、制服やシンボルマークを一新してアピールしたりするなど、さまざまな改革を行っていました。そうした中、本校は学力やイメージだけではない『教育本来の姿とは何か』ということを突き詰めて考え、徹底的にSIの具現化を図ったのです」
  鴎友学園女子中学校・高校がまず着手したのは、創立以来50年以上受け継がれてきた「慈愛と誠実と創造」という建学の精神を、現代的に解釈する作業だ。これにより「すべての生徒の可能性を信じて、生徒に自由な発想や行動を保障し、教師はそれを引き出す」という学校の方針が具体化された。
  当時、鴎友学園女子中学校・高校では生徒も教師も「まず肯定から始めよう」というスローガンの下、さまざまな教育活動を展開していた。それらを建学の精神から解釈した「自由」「表出」というキーワードを使って捉え直そうと試みたのである。例えば、教科指導において、国語では朗読劇などから表現学習の重要性を、数学では自作問題集などから複線的思考の重要性を、英語では「使える英語」を標榜して、4技能をバランスよく学ぶことが再確認された。「自由」「表出」という新たな指導方針が個々の授業の在り方にまで具現化されたのだ。
  こうした「理念の現在化」によって、「抽象的な表現にとどまっていた建学の精神が、現場の教師の実感と合致する形で、明確に共有された」と清水校長は話す。
  また、それまでの教育活動を振り返り、学外にも説明できるように明文化していった。当時の校長が全教師と対話を繰り返し、どんな授業をしているのか、どういう態勢で行っているのかを明らかにしていったのだ。「当時は、自分たちの取り組みをはっきりと言語化できていませんでした。そのため自信を持って、外部にアピールできなかったのです」と、吉野教頭は振り返る。


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