現場の教師が議論を重ねることで推進力を生み出す。こうしたボトムアップ型のマネジメントは、鴎友学園女子中学校・高校の大きな特徴であり、取り組みのさまざまな場面で見られる。
91年から実施しているテーマ学習はその好例だ。「環境」や「福祉」といったテーマで調べ学習を行うもので、現在の「総合的な学習の時間」を先取りした取り組みである。教科学力だけではない、「生き方」にかかわる力を身に付けさせたいという、当時の校長の考えによって始まったものだ。
「校長は取り組みの大枠だけを示し、具体的な実践方法はすべて現場の教師に任せました。当時はこうした取り組みを行う学校はほとんどありませんでしたから、教師も生徒と一緒に考えながら進めていきました」(清水校長)
こうした組織運営は、改革を始めてから15年経った今も変わらない。鴎友学園女子中学校・高校では例年行っている取り組みでもあえてマニュアル化を避け、同じテーマだとしても、具体的な内容や手法は各学年が毎年一から練り直している。一見、多くの学校の動きとは逆行した、遠回りな方法にも見えるが、実は取り組みを形骸化させない学校経営上の意図的な仕組みとなっている。中学校進路指導部の黒田和芳先生は次のように述べる。
「前年度の取り組みを焼き直すというレベルの会議ではないので、当然時間がかかります。毎年変わる生徒の実態に即して、『なぜこれをしなければならないのか』『どうしてこの方法なのか』といった本質から毎年議論を始めています。教師の負担は小さくありませんが、本質論からスタートした議論で生み出される結論は、教師一人ひとりが十分納得できるものとなります。学年団の足並みをそろえるためにも、必要なプロセスなのです」
議論の時間を確保するため、5教科の教科会は正課(授業)の時間内に週2時間ずつ組み込んでいる。また、非公式な議論の手法であるオフサイドミーティングや「ワイガヤ」も奨励し、ゼロベースの議論ができる環境づくりも目指している。例えば、学年会は月曜の放課後に行うが、議論が深夜に及ぶこともあるという。
|