特集 「学校力」を考える(2)「学校経営力」を高める
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 14/19 前ページ  次ページ

4 効果検証で モチベーションを 高める

 データ活用も盛んに行っている。特に改革初期には、教師に各種のデータを示すことで、教師の危機意識の共有を促していった。例えば、模試の他校比較や、過回・過年度の推移、大学入学志願者数や合格者数の推移など、目的に合わせてさまざまなデータが使われた。
  90年代に入ると、入学者の偏差値は上昇しているが、大学合格者数の増加に結び付かないという課題が浮上した。そこで、図2のようなグラフを使い、「入り口の部分では頑張っているのだから、教育の中身を良くすれば、出口も向上するのではないか」といった課題を会議で提起し、授業改善への気運を高めていったのだ。若手教師から「教科の枠を越えて授業を見学し合おう」といった呼びかけが出始めたのもこのころのことだ。

図2

  もちろん、データは意識啓発だけでなく、活動の方向は正しいか、確実に成果は出ているのかといった効果検証の材料としても用いている。例えば、90年代中頃に実施した、全校生徒を対象としたアイデンティティの確立度調査の結果では、学年が上がるにつれ「達成型」()が増えていくことが実証された(図3)。
  「それまでの本校の改革の方向性や実践が正しかったことを確認できた意味は大きかったです。指導の狙いであった、生徒たちの自己概念の面での成長は、教師にとって大きな自信につながりました」(吉野教頭)
  これからの課題を、高校進路指導部長の弓削多一朗先生はこう語る。
  「今後は自学自習の姿勢を育てることが重要です。部活動や行事など、学校生活のあらゆる場面を通して、生徒の自己肯定感を高めていくために、各活動の目的を明確にし、更に効果的な指導を模索していきます」
  ゼロベースの議論を尽くすボトムアップ型の組織マネジメント。それが、鴎友学園女子中学校・高校の学校経営力を生み出しているといえるだろう。

  ()アイデンティティの確立度を「達成型」「社会型」「自我型」「途上型」の4つに分類。最も自己肯定感の高いのが「達成型」である
図3

  PAGE 14/19 前ページ 次ページ