指導変革の軌跡 宮城県佐沼高校「学力向上」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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定期考査を60分にし試験と授業を改善

 教師の意識が向上した結果、学校内にはもっと高い目標に挑戦したいという雰囲気が生まれていた。しかし、「いざ実行」となると、何をすべきか戸惑う教師も少なくなかった。
  そんな状況を打破したのが、03年度に赴任した久力誠校長のリーダーシップだった。久力校長が最初に打ち出したのが、「現役国公立大合格者数50名」という数値目標だった。
  「前年度の35名という現役合格者数は過去最高の実績だったので、50名という目標は達成が難しいと先生方は思ったでしょう。しかし、この先生方ならやってくれるという確信を赴任当初から持っていました。プレッシャーにも耐えられるだけの気概を先生方が持っていたからこそ、あえて高い目標を掲げたのです」
  目標達成に向け、新しい取り組みが次々と実行に移された。中でも、指導力向上に向けた種々の取り組みは改革の大きな柱となった。定期考査の試験時間をセンター試験等の入試に合わせて50分から60分へ延長したことは、その一例だ。
  「定期考査で高得点を上げても、模試の得点が伸び悩む生徒は少なくありません。日々の指導で実践力を鍛えていくことを重視するのであれば、定期考査も入試に合わせた形態にすべきだと考えました」(久力校長)
  もちろん、10分延長した分の良質な問題を作成するのは容易ではない。単に問題量を増やすだけでは、入試を突破する力はつかないからだ。10分延長分の問題は「応用問題」とし、授業で扱った内容ではあるが、しっかりと考えなければ簡単には解けない問題を出すことにした。加藤栄之教頭は「検証することが重要」と強調する。
  「延長時間分の問題が妥当だったかどうかは、しっかりと検証しなければ次につながりません。そこで、試験中に監督する教師が、生徒の様子を記録した用紙を教務部に提出し、全体で共有するという体制を取りました。生徒が問題を解く様子を把握することで、問題の難易度の妥当性を判断し、次の作問に生かすようにしたのです。また、採点後には教科担当にアンケートを行い、『採点して気付いたこと』『10分問題の正答率』などを全教師で共有しています」
  応用問題を作るためには、授業も変えていかなければならない。出題内容を授業に組み込んでいかなければならないからだ。定期考査を10分延長することで、作問力が向上するだけでなく、授業に対する意識も向上し、教師の指導力につながっているのだ。


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