そもそも犬山高校が進路意識に関する取り組みを検討し始めたのは、00年だ。背景には、生徒の学力低下があった。かつては30名ほどいた国公立大への進学者数は年々落ち込み、「なるには講座」を実施した当時は、大学進学者がゼロに近い状態だった。
しかし、それ以上に深刻だったのは、生徒の進路意識の低下だった。
「進路調査に『未定』と書く生徒が目立つようになっていたのです。普通科の生徒はもちろん、就職する生徒が多い商業科でも、未定の者が少なくありませんでした」(木和田先生)
更に、希望する進路があったとしても、商業科の生徒が美容師を挙げるなど、職業に関する知識が不足しているために、現在の学習と将来の進路とを結び付けられない生徒も少なくなかった。
こうした変化は、生徒だけでなく保護者にも見られた。教務主任の佐橋誠先生は、次のように分析する。
「子どものしたいようにさせることが愛情と考え、親としての希望や考えを伝えられない保護者が増えているようです。進路を決める面談でも『フリーターでも仕方がない』と言う保護者がいます。以前はこうした傾向はなかったので、大変驚きました。保護者の子どもへの指導力が低下しているのではないかと感じています」
高校卒業後の進路をしっかりと見つめ、目標を持って高校生活を送ってもらいたい。教師たちのそんな思いが「なるには講座」の実施につながったのである。
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