指導変革の軌跡 兵庫県立姫路東高校「単位制高校」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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キャリア教育と面談の充実で進路意識を醸成

 3年間の進路指導の流れは図1の通りである。カリキュラムは、1年次では芸術以外すべて必修で、従来の学年制のカリキュラムとほとんど変わらない。2年次になると必修科目の割合は減り、3年次には必修科目10単位以下、選択科目は20単位以上となり、各自の適性や希望進路に応じた学習に取り組むことができる。

図1

  科目選択は、1、2年次7月に仮調査、12月に本調査を行い、2月に確定させる。単位制では、いかに早期に進路を明確にし、それに合った科目を選択できるかが重要だ。そのため、姫路東高校はまずキャリア教育の充実を図った。以前は2年次に行っていた職業ガイダンスは、1年次の6月に繰り上げた。弁護士や医師、通訳など約20種の職業の講師を招き、その中から生徒は二つを選び(現在は4職種)、仕事内容やその職業への就き方などの話を聞く。また、10月には学部・学科ガイダンスを行い、主体的に科目を選べるよう支援した。
  ただ、生徒の意志に委ねすぎては、偏った科目選択をするおそれがある。そこで、個々の志望に応じた科目選択を促すために面談が重要になる。
  姫路東高校ではあえて面談週間を設けず、日常的に声をかけ、生徒把握に努めている。特にポイントとなるのは科目選択の直前だ。例えば、英語に関する科目を履修するとしても、英語の専門家になりたいのか、英語を武器に他分野で活躍したいのかによって選択科目は変わる。英語に偏りすぎている生徒がいれば、「英語以外の科目も履修して人間の幅を広げてみては」といったアドバイスをする。
  単位制1期生の担任を3年間務めた定本永史先生は、「生徒と向き合って話す時間を増やすということが、年次主任の方針でした。その中で生徒には『夢を追え』ということを繰り返し訴えてきました。生徒が夢を追う限り、私たちは応援するという姿勢を明確に示すことで、生徒の信頼感を得ることができたと思います」と述べる。科目選択の先にある夢を意識させるという面談の成果は、この時期に難関国公立大の志望者が増加することからも明らかだ(図2)。

図2

  更に、生徒の指導と併せ、教師間の意識共有にも力を入れた。単位制導入に伴い、03~05年度には10名近い教師が加配された。新着任教師をいかにまとめるかは、単位制の成否にかかわる重要なポイントとなる。
  単位制導入前年の02年度から月1回の研修会を設け、全教師の意識共有を図ってきた。03年度以降も、単位制企画部から移行した単位制推進委員会の主導で、綿密な教員研修を行っている。特に重視するのは、毎年4月1日の新着任教員の辞令交付直後に行う研修だ。教員用マニュアルを渡し、従来の学年制との違いや姫路東高校の単位制のポリシー、広報活動の際の注意点などをレクチャーする。常陰先生は「教師の意識共有は本校の単位制を支える土台」と強調する。


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