指導変革の軌跡 東京都・私立順天中学校・高校「学力向上」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「テーマ研究」「グループコミュニケーション」で進路観を醸成

 学び方を工夫する一方、生徒の学習意欲を刺激するための取り組みも始めた。その一つが、高1の6月から高2の9月にかけて行う「テーマ研究」だ。教師1人あたり三つのテーマを設定し、生徒は全部で90ほどのテーマの中から興味のあるものを選び、自分で研究して論文にまとめ、発表する。土曜日のLHR後にあるゼミの時間以外にも、自主的な研究調査、資料収集などを行う。教師はあくまでもアドバイザー的な位置づけで、生徒が自ら探究することを目的とする。進路部長の井上慶彦先生は、「すべての生徒が進路と直結したテーマを選ぶわけではありませんが、自分の興味・関心をいま一度確認し、少しでも将来の希望が明確になれば」とテーマ研究の狙いを説明する。
  ゼミのテーマは、例えば05年度では「男女間の友情」「枕草子の謎」「アニマルセラピーについて」などがあり、人文科学系、社会科学系、自然科学系、生命科学系と多彩。ゼミごとに発表会を行って優秀論文を選び、それを学問系統内で発表して再び優秀作を選ぶ。更に、学習成果発表会で、全校生徒の前で発表して最優秀論文を選出する。こうした段階を追って発表の機会を設けることで、プレゼンテーション能力や論文作成能力の育成にもなる。
  もう一つは、「グループコミュニケーション」による自己啓発だ。LHRに組み込んでいる活動で、ディスカッションやディベート、将来を考えるさまざまな活動を、中高6年間の成長段階を踏まえて組んでいる(図4)。クラスメートと意見交換する過程で、自己表現力を養い、他者の意見を尊重し、自分の考えを明確にしていくことを目的としている進路学習の一環だ。
  「各学年とも年度当初にはエゴグラム(注1)を実施し、生徒が客観的に自己の性格をつかめるようにしています。その上で自己啓発の活動を行い、年度末には再度エゴグラムを行って、自らの成長を確認できるようにしています」(片倉先生)
注1「エゴグラム」とはアメリカの心理学者が開発した性格分析法。心を5つの領域に分類してグラフ化したもの
図4

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